メイプルリーフ金貨、ウィーン金貨ハーモニー、カンガルー金貨、アメリカン・ゴールドイーグル。
これらの地金型金貨は、金への投資や資産保全を目的として各国の造幣局が発行しています。
金貨の価格は、含まれる純金の重量と金相場が土台になりますが、品位が発行元の公表仕様どおりであることが前提です。
相続で受け継いだ金貨、ネットオークションで購入した金貨、長年保有してきた金貨。
品位に不安がある場合は、重量・寸法・外観の確認にX線分析を組み合わせることで、非破壊の判断材料を増やせます。導電率測定は有効な補完手段ですが、測定対象に適した機種・プローブ・測定条件を選ぶ必要があります。
この記事では、地金型金貨の品位と重量の基本、確認する際に知っておきたいポイント、にじや質店X線ラボでの検査体制を解説します。

地金型金貨は、金の品位と重量が定められた投資用金貨
地金型金貨は、金への投資や資産保有を目的として、各国の造幣局が公式の品位・重量・寸法を定めて発行しています。
古銭や収集型金貨では、希少性・年代・保存状態などによって地金価値を超える評価が付くことがありますが、地金型金貨の価格は、含まれる純金の重量と金相場が土台です。
実際の売買価格には、製造・流通費用や需給などによるプレミアムも加わります。
代表的な地金型金貨には、純金系の金貨と、K22(91.67%)の金貨があります。
メイプルリーフ金貨(カナダ)、ウィーン金貨ハーモニー(オーストリア)、カンガルー金貨(オーストラリア)はK24。
アメリカン・ゴールドイーグル(アメリカ)、クルーガーランド(南アフリカ)はK22です。
K22はK24より金の含有割合は低いものの、銀や銅を加えることで硬度や耐久性を高めた、発行元の正式な仕様です。
K22というだけで、品位不足や模倣品と判断することはできません。

なお、ブリタニア金貨(イギリス)は現在K24ですが、2012年以前に発行されたものはK22です。
品位は発行年によって異なる場合があるため、年代を無視して一律に判断することはできません。
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同じ「1オンス金貨」でも、品位と総重量は同じではない
地金型金貨の重量は「トロイオンス」で表示されるのが一般的です。
1トロイオンスは約31.1035gですが、この数字が金貨の総重量を示すとは限りません。
K24の金貨では、金貨の総重量と純金の重量がほぼ一致します。
一方、K22の金貨では、純金1トロイオンスを含ませるために、銀や銅の分だけ総重量が重くなります。
たとえば、メイプルリーフ金貨1オンスの総重量は約31.11gですが、アメリカン・ゴールドイーグル1オンスの総重量は33.931gです。
| 金貨 | 品位 | 純金重量 | 総重量 |
| メイプルリーフ | 99.99% | 31.10g | 約31.11g |
| ウィーン金貨ハーモニー | 99.99% | 31.10g | 約31.10g |
| カンガルー金貨 | 99.99% | 31.10g | 約31.107g |
| ゴールドイーグル | 91.67%(K22) | 31.10g | 33.931g |
| クルーガーランド | 91.67%(K22) | 31.10g | 約33.93g |
「1オンス金貨なのに31.1gより重い」と感じても、K22の金貨であればそれが正しい総重量です。
逆に、K22の金貨を知らずにK24だと思い込んで「品位が低い」と疑ってしまうケースも考えられます。
地金型金貨には1/2オンス、1/4オンス、1/10オンスといったサイズもあり、それぞれ純金重量と総重量が異なります。
品位・重量・直径・厚さは、金貨の種類・サイズ・発行年に対応した公式仕様と照合することが大切です。
X線分析では、レリーフによる凹凸や曲面、測定位置の違いが結果に影響するため、可能な範囲で平坦な箇所を複数測定し、一つの数値だけで判断しません。

外観・重量だけでは確認しきれない場合がある
公式仕様との重量・直径・厚さの照合は、金貨を確認する際の基本項目です。模様、エッジの加工、刻印の鮮明さ、色味、表面仕上げなども手がかりになります。
ただし、重量や外観が公式仕様と合っているだけで、品物が本物であると断定することはできません。
金と同等の比重を持つタングステンを用いた精巧な模倣品では、重量だけでは区別がつかない場合があります。
X線分析では、主に表面付近の元素構成と含有割合を確認します。
刻印や発行元の公表品位と分析値が大きく異なる場合や、想定外の元素が検出された場合は、重要な判断材料になります。
金メッキ品では、下地由来の元素を検出できる場合がありますが、メッキの厚さなどによっては下地の情報を十分に捉えられないこともあります。
また、表面を本物の金で覆い、内部に別の金属を用いた構造は、X線分析だけでは確認しきれない可能性があります。
こうした場合、品物の厚さや形状に適した導電率測定を組み合わせることで、内部に異材が含まれる可能性を検討するための判断材料が増えます。
ただし、測定可能な深さや範囲には限界があり、導電率だけで真正性を断定することはできません。
X線分析と導電率測定を組み合わせる理由
X線分析は、主に表層部の元素構成と含有割合を確認する方法です。
一方、SIGMASCOPEによる導電率測定は、位相感応型の渦電流法を利用して金属の電気的性質を測定します。測定値は材質だけでなく、厚さ、形状、測定周波数、温度、プローブの当て方などの影響も受けるため、対象に適した条件設定と基準値との比較が必要です。

金とタングステンは比重がほぼ同じですが、導電率は大きく異なります。
X線分析と導電率測定では見ている性質が違うため、両方の結果を組み合わせることで、判断材料が増えます。
当ラボが現在保有するSIGMASCOPE GOLD Bは、メーカーが主対象としている約1オンス(31.1g)から1kgまでの金地金向けの装置です。最大約17mm厚の金地金に対応しますが、薄い金貨の評価を主用途とする装置ではありません。そのため、現時点の地金型金貨については、重量・寸法・外観・X線分析を中心に確認しています。
金貨・コイン領域の導電率測定を強化するため、金貨および約100gまでの薄い金地金を対象とする「SIGMASCOPE GOLD C」を追加導入する予定です。

導入後は、X線分析とは異なる物性情報として導電率を確認し、重量・寸法・外観・公式仕様と合わせて総合的に判断します。
ただし、X線分析や導電率測定は、金貨の素材・品位・内部異材の可能性を検討するための分析です。発行元の証明、鑑定機関による真贋鑑定、将来の換金性を保証するものではありません。
測定値だけで結論を出すのではなく、重量、寸法、外観、刻印、発行年の公式仕様なども含めて総合的に判断します。

相続品や購入した金貨の品位が気になる方へ
次のような金貨をお持ちの方は、にじや質店X線ラボへご相談ください。
- 相続で受け継いだが、購入記録がなく品位が分からない金貨。
- ネットオークションや個人間取引で購入し、品位に不安がある金貨。
- 刻印はあるが、色味や重量に違和感がある金貨。
- 売却前に、品位を客観的に確認しておきたい金貨。
買取店やコイン商の方で、持ち込まれた金貨の素材を確認したい場合にもご利用いただけます。
ケースや付属品は捨てずに、表面を磨いたりせずにそのままお持ちください。
▶ X線分析のお申し込み
完全予約制X線分析サービスを開始しました
にじや質店X線ラボでは、新たに「完全予約制X線分析サービス」を開始いたしました。 お客様立会のもと、目の前でX線分析を行うサービスです。 金貨・インゴット・貴金属・コレクション品等について、その場で分析をご確認いただけま […]
投稿者プロフィール

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にじや質店X線ラボ 分析担当
株式会社クリエイティブファクトリー代表取締役。
にじや質店X線ラボにて、蛍光X線分析(XRF)を中心とした非破壊分析に取り組んでいます。
金・銀・プラチナなどの貴金属をはじめ、アクセサリー、金貨、地金、各種金属製品について、X線分析による元素組成・品位・材質の確認を行っています。
「見た目や刻印だけでは分からないものを、分析データで確認する。」
質屋・鑑定の実務経験と、X線分析・導電率測定・超音波測定・比重測定・顕微鏡観察などを組み合わせ、分析対象や目的に応じた評価に取り組んでいます。
なお、X線分析は試料表面付近の元素組成を調べる分析方法であり、分析結果だけですべての真贋や内部構造を断定できるものではありません。測定結果と各種情報を総合して評価することを重視しています。
■所属
・株式会社クリエイティブファクトリー 代表取締役
・にじや質店 代表鑑定士
・にじや質店X線ラボ 分析担当
■保有資格
・第一級陸上無線技術士
・電気主任技術者
・電気通信主任技術者
■経歴
1991年 株式会社リクルート入社
1994年 都内特許事務所にて特許出願業務に従事
1998年 創業、真空管輸入販売事業を開始
2000年 法人化
2013年 株式会社クリエイティブファクトリー設立
2014年 総合買取事業開始
2022年 にじや質店開業
2025年 にじや質店X線ラボ サービス開始
2026年 にじや相続評価 サービス開始
2026年 にじや分析ラボ開設
■専門・分析分野
・蛍光X線分析(XRF)
・金・銀・プラチナ等の貴金属分析
・金製品・金貨等の品位確認
・アクセサリー・金属製品の材質評価
・導電率測定
・超音波厚さ測定
・比重測定
・顕微鏡観察
・分析データを用いた真贋・材質評価
■主な分析・測定機器
・SPECTRO SCOUT
・島津製作所 EDX-7200
・VANTA Core V2CA
・SIGMASCOPE GOLD B/C
・超音波厚さ計 45MG
・比重計 GKS-3000
・実体顕微鏡/デジタルマイクロスコープ
■運営サイト
・にじや質店
https://nijiya-7ten.jp
・にじや質店X線ラボ
https://nijiya-xray.jp
・にじや分析ラボ
https://nijiya-lab.jp
・にじや相続評価
https://nijiya-souzoku.jp
・ヴィンテージサウンド
https://vintagesound.jp








