遺品整理やコレクションの整理で見つけた、美しい光沢を放つ金色に輝く記念メダルや古銭。
専用のケースに大切に保管されている立派な姿を見ると、すべてが本物の純金で作られていると期待を抱いてしまうものです。
しかし、古銭や記念メダルの世界は、ジュエリーと比べて真贋判定の難易度が格段に上がる、非常に奥深く専門的な領域です。
製造年代の幅広さ、刻印情報の少なさ、そして近年では内部に異種金属を仕込んだ精巧な偽物まで存在するため、見た目や手触りといった人間の感覚に頼る判断は通用しません。
この記事では、にじや質店X線ラボの分析実績にもとづき、古銭や記念メダルの真贋を見極める専門的な視点と、価値を下げないための重要な注意点を解説します。

古銭・記念メダルは「4タイプ」に分類される
古銭や記念メダルは、その素材や製造の意図によって、大きく4つのタイプに分類されます。
単に「金色だから本物」「重いから本物」と判断することはできず、それぞれのタイプを正しく理解することが価値判断の第一歩となります。

- 本物:造幣局など信頼できる発行元によって正規に製造された品物で、素材・刻印・付属書類のすべてが揃っています。資産価値とコレクター価値の双方を備えた、最も評価される存在です。
- 成分が同じ偽物:本物と同じ金合金(K22、K21.6など)(※金貨は、K18ではなく、K22、K21.6が主流です。オリンピック記念メダルでは、K18があります。)で製造された偽造品です。
たとえば本物の大判と同じ成分で作られたケースなどが該当し、金そのものとしての価値は残るものの、本物としての歴史的・コレクター価値は失われ、市場価値は本物に比べて格段に下がります。 - 成分が異なる安易な偽物:真鍮や銅など別の金属の表面に金メッキを施しただけの偽造品です。一見すると重厚感がありますが、金としての素材価値はほぼゼロで、コレクター価値もありません。
- タングステンが仕込まれた精巧な偽物:内部にタングステンなど比重が金に近い別金属を「餡子のように」仕込み、外側を金で覆った極めて精巧な偽造品です。重量感や見た目では本物と区別がつかず、価値はゼロにもかかわらず本物として高額取引されてしまう深刻なリスクがあります。
特に④のタングステン入り偽物は、近年問題視されている悪質な手口です。
詳細は以下のページを参照してください。
金インゴット・金地金を「中身まで非破壊で確認」全国対応|6重チェック分析
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「単一分析」では精巧な偽物は見抜けない
古銭や記念メダルの真贋判定が難しい最大の理由は、ひとつの分析方法だけでは判断材料が不足し、精巧な偽物をすり抜けさせてしまう点にあります。
たとえばX線分析は表層部の元素組成を非破壊で正確に測定できますが、内部にタングステンが仕込まれた④タイプの偽物では、外側の金層しか検出できないケースがあります。
一方で比重計だけに頼った場合も、タングステンと金の比重が近いため、内部に異種金属が仕込まれていても本物と誤判定されるおそれがあります。
つまり、X線分析だけ、比重測定だけ、刻印確認だけといった単一分析では、必ず判定の死角が生まれます。
にじや質店X線ラボでは、X線分析・比重測定・刻印確認といった複数の分析方法を組み合わせて総合的に判断することで、こうした死角を埋め、誤判定のリスクを最小限に抑えています。

コレクター視点で見る、価値判断の3つのポイント
古銭や記念メダルの価値は、単なる金属の素材や純度だけで決まるわけではありません。
- 発行枚数と希少性:限定発行されたメダルや、現存数が極めて少ない古銭は、素材が金でなくても高いコレクター価値を持ちます。
- 保存状態:傷や摩耗が少なく、発行当時の美しさを保っている美品ほど市場で高く評価されます。
- 付属書類の有無:専用のケースや、発行元が品質を保証する書類が揃っていると、取引時の信頼性が格段に上がります。
特に純金製の記念メダルの場合、公的機関による品位表示が非常に重要です。
独立行政法人造幣局では、貴金属製品の品位試験を行い、合格したものにのみ日本の国旗と純度を示す「ホールマーク」を打刻しています。
【出典】独立行政法人造幣局「貴金属製品の品位証明」
URL:https://www.mint.go.jp/operations/exam/operations_certification-01.html
このマークがあるメダルは一定の信頼性が担保されますが、近年ではマーク自体を精巧に偽造した悪質な品も存在するため油断は禁物です。
査定前に絶対やってはいけない4つのこと
古銭や記念メダルは、「オリジナル」の状態に近いほど価値が高くなるという大前提があります。
ここでいう「オリジナル」とは、当時の新品未使用品(箱や付属書類があればそれも含めて)の状態を指します。
良かれと思って手を加えた行為が、結果的に大きく価値を棄損してしまうケースは少なくありません。査定や分析に出す前に、絶対にやってはいけない代表的な行為は以下の4つです。

- 磨かない:表面を磨くと当時の風合いや酸化被膜(パティナ)が失われ、新品の輝きとはまったく別物の「磨かれた古銭」となって価値が大きく下がります。
- 洗わない:水洗いや薬品洗浄は、表面の文字や模様、墨書きなどを取り返しのつかない形で破壊するおそれがあります。
- ケースや箱を捨てない:当時の専用ケース・化粧箱・保証書は、本物であることの裏付けとなる重要な付属品です。捨ててしまうと評価額が大きく下がります。
- セットをバラさない:記念メダルのセット品は、揃っている状態でこそ価値が成立します。一枚ずつ分けて売却すると、合計額が大幅に目減りします。
実際に、笑うに笑えない事例として、江戸時代の大判が出てきて、表面の汚れを除去するために水道水で洗ったところ、当時の墨書きが全部流れてしまい、のっぺらぼうの大判になってしまったというケースもあります。
良かれと思ってのクリーニングが、価値の決定的な毀損につながることは決して珍しくありません。
手元の品物に少しでも価値の可能性を感じたら、まずは何もせず、そのままの状態で専門家に相談することが鉄則です。
インディアン金貨10ドルの分析事例|重量不足・K18相当を確認
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まとめ
古銭や記念メダルは、素材の価値とコレクターとしての歴史的価値の双方が複雑に絡み合う奥深い世界です。
さらに近年では、内部にタングステンを仕込んだ精巧な偽物まで流通しており、X線分析だけ、比重測定だけといった単一の手法では判定の死角が生まれます。
だからこそ、複数の分析方法を組み合わせた総合的な判断と、「オリジナルの状態」を保ったまま専門家に相談する姿勢が、何よりも重要です。
「本物の金かもしれない」と期待して自己判断でフリマアプリに出品したり、逆に偽物だと思い込んで捨ててしまったり、あるいは良かれと思って磨いてしまったりする前に、まずは科学的なデータをもとに表層部の成分を把握してください。
正確な事実を知ることが、大切なコレクションや遺品を適正な価値で後世へ引き継ぐための最短ルートです。
投稿者プロフィール

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現役質屋の鑑定士で、非破壊検査(X線分析・導電率・超音波等)を用いた
貴金属・宝石の真贋鑑定および分析の専門家。
「見た目では分からない本質を、科学の目で見抜く」を信条に、
金インゴット・宝飾品・時計などの鑑定と分析を日々の業務として取り組む。
東京都青梅市在住
株式会社クリエイティブファクトリー 代表取締役
■保有資格
・第1級陸上無線技術士
・電気主任技術者
・電気通信主任技術者
■経歴
1991年 株式会社リクルート入社
1994年 都内特許事務所にて特許出願業務に従事
1998年 創業、真空管輸入販売事業を開始
2000年 法人化
2013年 株式会社クリエイティブファクトリー設立
2014年 総合買取事業開始
2022年 にじや質店 竣工
2025年 にじや質店X線ラボ サービス開始
2026年 にじや相続評価 サービス開始
■専門分野
・金インゴットの真贋判定
・貴金属の非破壊分析
・宝石・時計の評価
・偽物・メッキ判別
・真空管
■運営サイト
・にじや質店
https://nijiya-7ten.jp
・にじや質店X線ラボ
https://nijiya-xray.jp
・にじや相続評価
https://nijiya-souzoku.jp
・ヴィンテージサウンド
https://vintagesound.jp








