「このピアスを着けると、なぜかかゆくなる」
「このネックレス、何だか鉄のようなにおいがする」

そんなアクセサリーの違和感を覚えたことはありませんか。

かゆみやにおいだけで素材を特定することはできませんが、「表示どおりの素材なのだろうか」と気になるきっかけになることがあります。

今回はアクセサリー表示で見かける「サージカルステンレス」がテーマです。

「サージカル」は「外科の」という意味です。

医療器具に使われる金属のイメージから、肌にやさしそう、丈夫そう、という印象を持たれることも多いようです。

この記事では、サージカルステンレスとはどんな金属なのか、そしてX線分析でどこまで中身を確かめられるのかを、わかりやすく解説します。

ピアスやネックレスでよく見る「サージカルステンレス」

「サージカルステンレス」と表示されたアクセサリーは、ネット通販や実店舗で数多く販売されています。

ピアス、リング、ネックレス、ブレスレット。

金属アレルギーが気になる方に向けた商品として紹介されていることが多い素材です。

ただし、「サージカルステンレス」はJISで定められた鋼種名ではなく、アクセサリー表示としての公的な定義や統一基準もありません。

一般には、SUS316Lという種類のステンレスを指す言葉として使われることがあります。

なお、体内に入る医療用インプラント(人工関節など)には、別途ISOによる国際規格が定められています。

「アクセサリーのサージカルステンレス」と「医療用として規格に適合したインプラント素材」は、必ずしも同じものを指しているわけではありません。

「サージカルステンレスならアレルギーが起きない」
「表示どおりの素材が使われている」

本当にそうだろうか、と一度立ち止まって考えてみると、見えてくることがあります。

同じ銀色でも、ステンレスの中身は同じではない

ステンレスと一口に言っても、実はさまざまな種類があります。

キッチン用品などで使われるSUS304、SUS304より耐食性を高めたSUS316やSUS316L、一部の高級腕時計に使われる904L系など、用途に応じてさまざまな種類があります。

それぞれの種類は、含まれる元素の割合が少しずつ異なります。

アクセサリーで「サージカルステンレス」と呼ばれるものは、前述の通り、一般にSUS316Lを指すことがあります。

SUS316Lは、鉄を主成分に、クロム、ニッケル、モリブデンなどを加えた、耐食性の高いステンレスです。

ただし、商品ラベルに「サージカルステンレス」と書かれていても、実際の中身までは、ラベルだけでは分かりません。

実際にはSUS304など別の種類のステンレスだったり、表面にメッキなどの加工が施されていたりする可能性もあります。

見た目が同じ銀色でも、中身は必ずしも同じとは限らないのが、ステンレスの世界です。

ちなみに、アクセサリーを触ったあとに感じる「鉄のようなにおい」も、素材を見分ける決め手にはなりません。

金属そのものからにおいが出ているのではなく、汗などによって生じた金属イオンが皮膚の脂質と反応し、発生した物質を「金属臭」として感じている場合があります。

鉄だけでなく、銅や真鍮でも似たにおいが生じることがあるため、においだけでサージカルステンレスかどうかを判断することはできません。

見た目やにおいでは分からない金属の中身を確認するときに、X線分析が役立ちます。

X線分析は、金属の「材料表」を見るようなもの

こうしたときに役に立つのが、当ラボのX線分析(蛍光X線分析)です。

蛍光X線分析では、測定箇所の表面付近に含まれる元素と、その割合の目安を数値で確認できます。なお、得られる結果は測定した箇所の表層部を反映するもので、製品内部や製品全体の組成をそのまま示すものではありません。

品物を切ったり、削ったりする必要はありません。

JIS規格では、SUS316Lを構成する主要元素について、それぞれ成分範囲が定められています。

当ラボでは、測定箇所から得られた複数の元素情報を確認し、ステンレス系の組成であるかを評価します。

さらに、測定結果を公表されている規格値や商品表示と照らし合わせ、組成上の整合性や明らかな矛盾の有無を総合的に検討します。

このように、当ラボでは主要元素の実測値を基礎として、SUS316系との組成上の整合性や、商品表示との明らかな矛盾の有無を評価します。

評価結果は、「SUS316系との整合性あり」「表示との明らかな矛盾なし」「表示との整合性は認めにくい」など、測定で確認できた範囲に即してお伝えします。

なお、蛍光X線分析だけでは、SUS316とSUS316Lのように組成が非常に近い鋼種を、はっきりと区別することはできません。

そのため、無理に鋼種を一つに断定するのではなく、確認できた範囲を明確にしたうえで、表示されたステンレス系統との整合性という形でお伝えしています。

実際に、販売事業者さまから、複数のアクセサリーチェーンについて表示された材質を確認したいというご依頼をいただくことがあります。

分析の結果、表示内容と組成上の整合性が認められた品物もあれば、表示との整合性が認めにくい品物も確認されました。

こうしたご依頼は、着用時のかゆみやにおいをきっかけとしたものではなく、表示された材質そのものを確かめるためのものです。かゆみやにおいだけから素材や症状の原因を特定することはできないため、両者は分けて考える必要があります。

316Lでも、絶対にアレルギーが起きないとは限らない

「サージカルステンレス」と表示されたアクセサリーでも、着用中にかゆみや赤みが出ることはあります。異常が生じた場合は使用をやめ、医療機関を受診しましょう。

SUS316Lは、ニッケルを含む合金です。SUS316Lにニッケルが含まれているからといって、必ず溶出するわけではありません。

ニッケルの溶出量は、製品の表面処理などによっても変わります。

国民生活センターは、通販サイトで「金属アレルギー対応」と検索して上位に表示されたネックレス60銘柄を蛍光X線分析し、そのうちニッケルを1.1%以上含む40銘柄に溶出試験を行いました。その結果、8銘柄でニッケルの溶出が確認されました。

なお、X線分析でニッケルが検出されても、必ずしもニッケルが溶出するわけではありません。

検出と溶出は、別の話として考える必要があります。

金属アレルギーの症状が実際に出るかどうかは、体質、接触時間、汗の量、アクセサリーの傷や劣化など、さまざまな要素が関わります。

「サージカルステンレスだから絶対に大丈夫」とは限りません。

X線分析は、商品表示と測定箇所の元素組成を照らし合わせ、表示との明らかな矛盾がないかを非破壊で確認するための判断材料の一つとしてご活用ください。

金属アレルギーの原因金属を特定する方法「K18」も「ニッケルフリー」も油断禁物。X線分析で正体を暴く

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商品表示を確かめたいときは、X線分析でご相談ください

「このピアス、本当にサージカルステンレスなのだろうか」
「アレルギーが気になるので、表示どおりの素材か確認しておきたい」

こうした場面で、非破壊のX線分析が判断材料になります。

X線分析では、測定箇所の表面付近にどのような元素が含まれているかを確認できます。当ラボでは、品物の大きさや形状に応じて測定箇所を選定します。

表面処理や品物の構造によって測定結果が影響を受ける場合があるため、品物の状態を確認したうえで分析します。

商品表示と測定箇所の元素組成を照らし合わせ、SUS316系との組成上の整合性や、表示との明らかな矛盾の有無を確認できます。なお、金属アレルギーが起きないことを保証する分析ではありません。

すべてのアクセサリーを分析する必要はありません。

しかし、思い入れがあって使い続けたい品物や、「SUS316L」という表示との組成上の整合性、あるいはニッケルが検出されるかどうかを確認したい品物であれば、X線分析を判断材料の一つにできます。

なお、ニッケルが検出されなかった場合でも、測定箇所や検出限界を超えて製品全体の「ニッケルフリー」を保証するものではありません。

ハンドメイド作家さまや販売事業者さまの場合は、仕入れた金具や代表サンプルの元素組成を確認するという活用も考えられます。

ただし、一つの測定結果だけで、同じロットやすべての商品が同じ素材だと保証できるわけではないことをご理解ください。

遠方の方は、郵送によるX線分析もご利用いただけます。

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投稿者プロフィール

代表鑑定士 佐々木 英明
代表鑑定士 佐々木 英明
現役質屋の鑑定士で、非破壊検査(X線分析・導電率・超音波等)を用いた
貴金属・宝石の真贋鑑定および分析の専門家。

「見た目では分からない本質を、科学の目で見抜く」を信条に、
金インゴット・宝飾品・時計などの鑑定と分析を日々の業務として取り組む。

東京都青梅市在住
株式会社クリエイティブファクトリー 代表取締役

■保有資格
・第1級陸上無線技術士
・電気主任技術者
・電気通信主任技術者

■経歴
1991年 株式会社リクルート入社
1994年 都内特許事務所にて特許出願業務に従事
1998年 創業、真空管輸入販売事業を開始
2000年 法人化
2013年 株式会社クリエイティブファクトリー設立
2014年 総合買取事業開始
2022年 にじや質店 竣工
2025年 にじや質店X線ラボ サービス開始
2026年 にじや相続評価 サービス開始

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