古銭の収集を楽しまれている方にとって、手元のコインが本物かどうか、そして素材がどのような成分でできているのかは、とても気になるポイントではないでしょうか。
古銭の真贋を公式に判定する仕組みとしては、日本貨幣商協同組合(JNDA)が発行する鑑定書がよく知られています。
一方で最近、にじや質店X線ラボでも、古銭やコインの素材を確認したいというご相談をいただくようになっています。
本記事では、公式鑑定書とX線分析の違いや、それぞれがどのような場面で役立つのかについて、わかりやすく整理してお伝えいたします。

日本貨幣商協同組合(JNDA)の鑑定書とは
日本貨幣商協同組合は、昭和44年に設立された全国の貨幣商約90名からなる協同組合で、古銭の収集文化の普及に取り組んでいる団体です。
同組合には鑑定委員会が設けられていて、貨幣のスペシャリストが真贋の判定と評価を行い、真正品と認められた場合に公式な鑑定書が発行されます。
この鑑定書は「収集用貨幣に関する我が国で唯一の公式な鑑定書」とされていて、コレクターの間では資産価値を裏付ける重要な書類として広く認知されています。
鑑定書の取得には、全国の組合加盟店を通じて申し込む流れになっていて、鑑定料は品物の時価に応じて11,000円(税込)からの段階制で、品物の価格に応じて変動します。なお、にせ物と判定された場合や鑑定が不可能だった場合でも、1品につき8,800円(税込)の申し込み手数料が発生します。
ただし、すべての貨幣に鑑定書が発行されるわけではありません。外国貨幣や現在も法定通貨として通用している貨幣、著しく劣化したもの、加工品・修正品などは、鑑定書発行の対象外となる場合があります。
X線分析が提供するもの|「何でできているか」を数値で知る
一方のX線分析は、古銭の表面にX線を照射して、含まれている元素の種類と割合を数値で明らかにする科学的な分析手法です。
たとえば天保一分銀であれば「銀が98.9パーセント、金が0.2パーセント、その他が0.9パーセント」、安政二分金であれば「金が22.58パーセント、銀が77.42パーセント」といった具体的な成分データが、品物を傷つけずに得られます。
ここで大事なのは、公式鑑定書とX線分析は「目的が異なる」ということです。
公式鑑定書は、貨幣のスペシャリストが極印の形状、仕上げの特徴、重さ、時代背景などを総合的に判断して「この古銭は本物である」と認定する書類です。
一方、X線分析は「この古銭の表面はどんな元素でできているか」を数値で示すもので、あくまで成分のデータを提供する役割になります。
つまり、この2つは競合するものではなく、目的に応じて使い分けるものと言えます。

X線分析で成分が分かれば本物と言えるのか|成分が一致しても偽造はある
では、X線分析で成分さえ分かれば「これは本物だ」と言い切れるのでしょうか。
結論から申し上げると、必ずしもそうではありません。
古銭の世界では、本物と同じ金銀合金を使用して、後年に製作された模造品が存在します。この場合、X線分析を行うと本物と近い成分値が得られてしまうため、成分データだけでは真贋を判定できません。
こうした模造品を見抜くには、古銭専門鑑定士による総合的な判断が不可欠です。鑑定士は、質量、刻印の形状や深さ、色合い、製造時に特有の仕上げの特徴などを丹念に確認し、本物か模造品かを見極めます。
つまり、X線分析は「何で作られているか」を確認する技術であり、専門鑑定士は「いつ、どのように作られたか」を見極める専門家、と言うことができます。両者は競合するものではなく、互いを補完する関係にあるのです。
X線分析で成分的な不自然さがないことを確認し、そのうえで専門鑑定士が真贋や希少性を評価する。この二段構えによって、より安心してコレクションを楽しんでいただけるようになります。
事例:明治1円銀貨に見る偽造の3パターン
古銭の偽造品として、特に流通量が多いのは「明治1円銀貨」です。
明治1円銀貨は、日本貨幣カタログによると本来の成分が「銀90パーセント・銅10パーセント」とされています。
これに対し、偽造品は次の3つのパターンに分類されます。

ご覧のとおり、X線分析で見抜けるのはパターン2とパターン3の2種類です。
パターン1のように、本物と同じ「銀90パーセント・銅10パーセント」で作られた偽造品については、X線分析だけでは判別できません。
しかし、こうした偽造品もルーペやデジタル顕微鏡で観察すると、作りが粗かったり、刻印が甘かったりといった違いが見えてきますので、鑑定眼で見抜くことが可能です。
なぜパターン1の偽造が放置されているのか|通貨偽造罪との関係
では、なぜパターン1のように本物と同じ成分で精巧に作られた偽造品が存在し、しかも一定の流通量を保っているのでしょうか。
これには法的な理由があります。明治1円銀貨は「現行通貨」ではないため、たとえ偽造が発覚しても「通貨偽造罪」には問われないのです。
通貨偽造罪(刑法148条1項)とは、お札や硬貨として使う目的(行使の目的)で、日本国内で流通している紙幣や硬貨を偽造・変造する犯罪を指します。国の経済や通貨への信用を揺るがす重大な犯罪であるため、罰金刑は設けられておらず、無期または3年以上の拘禁刑(旧懲役刑)という非常に重い法定刑が科されます。
一方、明治1円銀貨のような「すでに法定通貨ではなくなった古銭」については、この通貨偽造罪の対象外となるため、偽造の心理的ハードルが下がってしまっているのが実情です。

現行通貨の偽造事例|昭和天皇御在位60年記念10万円金貨
これに対し、現行通貨である「昭和天皇御在位60年記念10万円金貨」については、過去に偽造品が流通した事例があります。こちらは現行通貨であるため、偽造が発覚すれば通貨偽造罪に問われることになります。
偽造10万円金貨は、本物に比べて色味が赤っぽかったり、表面仕上げが粗かったりといった特徴がありますので、慣れればルーペ観察やデジタル顕微鏡で見抜くことが可能です。
にじや質店X線ラボの体制|表層X線分析+導電分析による内部チェック
にじや質店X線ラボでは、表層部のX線分析に加えて、導電分析装置「SIGMASCOPE GOLD」を使用して金貨内部の分析も行う体制を整えております。
X線分析で表面の元素組成を確認するだけでなく、導電分析によって内部までしっかり本物の材質で作られているかを確認することで、メッキや異種金属を芯材に使った偽造品を、より確実に看破することができます。
「成分は本物と同じに見えても、内部はどうなっているのか」というご不安にも、二段構えの体制でお応えしております。
なぜ古銭コレクターがX線分析を選ぶのか
では、なぜ古銭コレクターの方々がX線分析を選ばれるのでしょうか。
いくつかの理由が考えられます。
まず、コストの差があります。
公式鑑定書は1点あたり11,000円(税込)から、品物の時価が高くなると数万円から十数万円の費用がかかります。
コレクションが数十点、数百点に及ぶ方にとっては、すべてに鑑定書を取得するのは現実的ではありません。
X線分析であれば、1か所あたり1,100円という費用で成分データが得られますので、手持ちのコレクション全体の傾向を把握するという使い方に向いています。
次に、自分の目で数値を確認できるという満足感があります。

「この天保一分銀は本当に銀98パーセント台なのか」「祖父から譲り受けたこの小判の金含有量はどれくらいなのか」といった、成分に対する純粋な好奇心を満たせる点が、コレクターの方々にとっての魅力になっているようです。
また、公式鑑定書の申し込みは組合加盟店を経由する必要があり、鑑定委員会での判定を経て結果が戻ってくるまでに時間がかかります。
X線分析であれば、品物を郵送してから翌営業日には発送するスピード対応が可能ですので、「とにかく早く成分を知りたい」というニーズにも応えられます。
使い分けの考え方と最初の一歩
おすすめの使い分けとしては、売買の場面で資産価値を公式に裏付ける必要がある場合や、高額な古銭の真贋を正式に認定してもらいたい場合には、日本貨幣商協同組合の鑑定書が適しています。
一方、コレクション全体の成分傾向を把握したい、購入を検討している古銭の素材が表示どおりかを事前に確認したい、という場合には、X線分析が手軽で有効な選択肢となります。
とくに最近、フリマアプリやネットオークションで古銭を購入される方が増えていて、「写真だけでは判断できない」「届いた品物が本当に銀なのかを確認したい」というご相談を多くいただいております。
こうした場面では、まずX線分析で成分を確認し、必要に応じて公式鑑定書の取得を検討するという2段階のアプローチが、費用対効果の高い方法と言えるかもしれません。
にじや質店X線ラボでは、古銭・コインのX線分析を1か所あたり1,100円(税込)で承っております。全国対応で、翌営業日の発送に対応しています。
お手持ちのコレクションの素材について気になるお品物がございましたら、まずはお気軽にLINEでご相談ください。
詳細・お申込みは下記の専用ページからご確認いただけます。
コイン・古銭のX線分析|収集品の素材を数値で可視化|全国対応・翌営業日発送 | 金・銀・プラチナ等の非破壊X線分析|1箇所1,100円(税込)から|全国対応・翌営業日発送
このサイトは、東京都青梅市の質屋「にじや質店」が運営しており、「にじや質店X線ラボ」および「ロゴマーク」は、株式会社クリエイテイブフアクトリーの登録商標です。 実店舗での質…
投稿者プロフィール

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現役質屋の鑑定士で、非破壊検査(X線分析・導電率・超音波等)を用いた
貴金属・宝石の真贋鑑定および分析の専門家。
「見た目では分からない本質を、科学の目で見抜く」を信条に、
金インゴット・宝飾品・時計などの鑑定と分析を日々の業務として取り組む。
東京都青梅市在住
株式会社クリエイティブファクトリー 代表取締役
■保有資格
・第1級陸上無線技術士
・電気主任技術者
・電気通信主任技術者
■経歴
1991年 株式会社リクルート入社
1994年 都内特許事務所にて特許出願業務に従事
1998年 創業、真空管輸入販売事業を開始
2000年 法人化
2013年 株式会社クリエイティブファクトリー設立
2014年 総合買取事業開始
2022年 にじや質店 竣工
2025年 にじや質店X線ラボ サービス開始
2026年 にじや相続評価 サービス開始
■専門分野
・金インゴットの真贋判定
・貴金属の非破壊分析
・宝石・時計の評価
・偽物・メッキ判別
・真空管
■運営サイト
・にじや質店
https://nijiya-7ten.jp
・にじや質店X線ラボ
https://nijiya-xray.jp
・にじや相続評価
https://nijiya-souzoku.jp
・ヴィンテージサウンド
https://vintagesound.jp
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