古銭コレクターの方であれば、天保一分銀や安政二分金といった江戸時代の貨幣をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
これらの古銭は、鋳造された時代ごとに金や銀の含有率(品位)が異なるという、歴史的にとても興味深い特徴を持っています。
本記事では、にじや質店X線ラボに実際にお寄せいただいた古銭分析のご依頼事例をもとに、江戸時代の貨幣をX線分析で調べることで見えてくる、コレクションの新しい楽しみ方についてご紹介いたします。
時代によって変わる金銀比率|江戸時代の貨幣改鋳の歴史

江戸幕府は約260年の歴史の中で、何度も貨幣の改鋳(素材の比率や重さを変えて作り直すこと)を行いました。
改鋳のたびに金や銀の含有率が変化したため、同じ「一分銀」や「二分金」という名前でも、時代によって中身の成分がまったくちがうのです。
たとえば天保一分銀は、天保8年(1837年)から鋳造が始まった銀貨で、規定品位は銀が99.1パーセント、その他が0.9パーセントとされています。
ほぼ純銀に近い高品位の貨幣です。
ところが、その後に作られた安政一分銀は、天保一分銀に比べて銀の含有率が下げられているとされます。
その背景には、開港後に国内外の金銀比価の差が問題となり、外国銀貨との交換を通じて日本の金貨が海外へ流出したことなど、幕末特有の貨幣事情がありました。
金貨についても同じことが言えます。
天保一分判金の品位は金56.8パーセント、銀43.2パーセントですが、安政二分金は低品位金貨として知られていて、金の比率はさらに下がっています。
幕府の財政事情がそのまま貨幣の品位に反映されていたわけです。
実際にお寄せいただいた古銭分析のご依頼
にじや質店X線ラボには、最近、古銭コレクターの方々からのX線分析のご依頼が増えてきています。
たとえば、ある方からは安政二分金、秋田銀判、天保一分銀など計9点をまとめてお送りいただき、すべての品位を数値で確認されたいというご依頼がありました。
また別の方からは、1円銀貨を明治7年、大正3年、明治38年と年代違いで3点お送りいただき、それぞれの銀含有率を比較されたいというご依頼もありました。
共通しているのは、「公式な鑑定書がほしい」というよりも「自分のコレクションの成分を数値で確認して、歴史的な品位の記録と照らし合わせたい」という知的好奇心が動機になっている点です。
X線分析の結果をお伝えすると、「記録に近い品位が出て、安心材料になりました」というお声もあれば、「思ったより銀の含有率が低くて、もしかすると後年に作られた写し(レプリカ)かもしれません」という発見につながるケースもあります。






見た目と分析結果が異なる印象的な事例
古銭分析では、ご依頼者様が想像していた素材や品位と、X線分析の結果が大きく異なるケースに出会うことがあります。
たとえば、金色に輝いて見える古銭や記念章をX線分析にかけてみると、実際には真鍮(銅と亜鉛の合金)が主体で、金の成分がほとんど検出されない、という結果になることがあります。
特に印象に残っているのは、ある依頼者様から明治1円銀貨を30枚まとめてお預かりした事例です。
結果は驚くべきもので、30枚すべてが銅と亜鉛の合金に銀メッキを施しただけの、典型的な偽造パターンの品物でした。
分析結果をお伝えしたときの依頼者様の落胆ぶりは、いまも忘れることができません。
大切なご資金を投じてネットオークションで入手された品物とのことで、客観的な数値として「全数が偽造品である」と判明した瞬間の重みは、私たちにとっても忘れがたい事例となりました。
古銭の世界では、肉眼や手触りだけで真贋や品位を見極めることが極めて難しいケースが少なくありません。
高額な取引の前に成分分析を行っておくことの大切さを、改めて感じさせられる出来事でした。
X線分析で見えてくる「時代の手がかり」
古銭をX線で分析すると、金・銀・銅といった主成分に加えて、微量に含まれる元素(亜鉛、錫、鉛など)の存在もデータに表れます。
これらの微量元素の組み合わせは、いわば「時代の手がかり」のようなものです。
もちろん、X線分析だけで鋳造場所や年代を断定することはできませんが、同じ種類の古銭を複数点比較すると、成分の傾向や個体差が見えてくる場合があります。

こうした成分データを自分のコレクション全体で比較していくと、「この一分銀は他のものと銅の比率がわずかにちがう」「この二分金は金含有率が規定よりも若干高い」といった、肉眼では気づけない情報が浮かび上がってきます。
実際に、最近にじや質店X線ラボで分析した明治二分判金(明治期に流通していた金貨)では、一般に知られる公称品位(金22.3パーセント、銀77.7パーセント)と大きく異なる表面分析結果が得られた事例がありました。
江戸から明治にかけての金銀貨は、近代以降のような厳密な工業製品とは異なり、製造時期や鋳造ロットによって成分の傾向に幅が生じる場合があります。
こうした結果をお伝えすると、依頼者様からは「見た目だけでは分からないものですね」というご感想をいただくことが少なくありません。
古銭コレクターの方にとっては、見た目の美しさや希少性に加えて、「成分の数値」という新しい観察の軸がコレクションに加わることになります。
なお、X線分析はあくまで表面の元素の構成を測定するものであり、内部の構造までは確認できないという限界がある点もお伝えしておきます。
古銭の中には表面だけ銀メッキを施した偽造品もありますので、X線分析の数値が規定品位どおりだったとしても、それだけで真正品の証明にはなりません。
歴史的背景の知識や、極印の形状確認など、他の要素と合わせて総合的に判断していただくことが大切です。
X線分析は真贋を保証するものではありませんが、古銭コレクションを新しい視点で楽しむための科学的な情報を提供できる点こそが、大きな魅力であると私たちは考えています。
コレクション記録としてのX線分析データ
古銭コレクションを次の世代に引き継ぐ場面や、将来の売却を考えている場合、成分分析データを記録として残しておくことには大きな意味があります。
「このコインは銀98パーセント台のデータが出ている」という客観的な数値が添えられていることで、相続のときの遺産分割や、査定のときの価値判断の参考資料として活用できるためです。
また、明和南鐐二朱銀や秋田銀判といった希少な古銭では、「本当にこの成分なのか」という疑問が長年あっても確認する手段がなかったというコレクターの方もいらっしゃいます。
X線分析なら品物を傷つけずに成分を確認できますので、大切なコレクションの価値を損なうことなくデータを取ることが可能です。
にじや質店X線ラボでは、古銭のX線分析を1か所あたり1,100円(税込)で承っております。
複数点をまとめてお送りいただくと送料もお得になりますので、コレクション全体の成分データを揃えたいという方には、まとめてのご依頼がおすすめです。
詳細・お申込みは下記の専用ページからご確認いただけます。
コイン・古銭のX線分析|収集品の素材を数値で可視化|全国対応・翌営業日発送 | 金・銀・プラチナ等の非破壊X線分析|1箇所1,100円(税込)から|全国対応・翌営業日発送
このサイトは、東京都青梅市の質屋「にじや質店」が運営しており、「にじや質店X線ラボ」および「ロゴマーク」は、株式会社クリエイテイブフアクトリーの登録商標です。 実店舗での質…
投稿者プロフィール

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現役質屋の鑑定士で、非破壊検査(X線分析・導電率・超音波等)を用いた
貴金属・宝石の真贋鑑定および分析の専門家。
「見た目では分からない本質を、科学の目で見抜く」を信条に、
金インゴット・宝飾品・時計などの鑑定と分析を日々の業務として取り組む。
東京都青梅市在住
株式会社クリエイティブファクトリー 代表取締役
■保有資格
・第1級陸上無線技術士
・電気主任技術者
・電気通信主任技術者
■経歴
1991年 株式会社リクルート入社
1994年 都内特許事務所にて特許出願業務に従事
1998年 創業、真空管輸入販売事業を開始
2000年 法人化
2013年 株式会社クリエイティブファクトリー設立
2014年 総合買取事業開始
2022年 にじや質店 竣工
2025年 にじや質店X線ラボ サービス開始
2026年 にじや相続評価 サービス開始
■専門分野
・金インゴットの真贋判定
・貴金属の非破壊分析
・宝石・時計の評価
・偽物・メッキ判別
・真空管
■運営サイト
・にじや質店
https://nijiya-7ten.jp
・にじや質店X線ラボ
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・にじや相続評価
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