金属アレルギーの診療では、患者様から次のような相談を受けることがあります。
- 「このピアスをつけると耳たぶが赤くなる」
- 「ネックレスをすると首まわりがかゆくなる」
- 「銀歯を入れてから、手や足の皮膚症状が気になる」
- 「金属アレルギー対応と書かれたアクセサリーなのに、かぶれてしまった」
こうした場合、皮膚科ではパッチテストを通じて、患者様がどの金属に反応しやすいかを調べていきます。

しかし、パッチテストで「ニッケルに反応している」と分かっても、患者様が実際に身につけているピアスやネックレス、時計の金具、口腔内の歯科金属に、その金属が含まれているかまでは判定できません。
診療現場では「患者様側の反応」は確認できても、「患者様が日常的に接触している物の素材」が分からないという疑問が残ります。
にじや質店X線ラボでは、こうした診療現場のもう一歩先を支援するために、蛍光X線分析装置(EDX)を用いた非破壊の金属成分確認サービスを提供しています。
対象物にX線を照射し、そこから発生する蛍光X線のエネルギーを測定することで、表層部に含まれる元素の種類と含有率をパーセンテージで算出します。
患者様のアクセサリーや金属製品を傷つけることなく、ニッケル・クロム・コバルト・パラジウムなどアレルギー原因候補金属の有無を数値で確認できます。
パッチテストだけでは埋まらない「素材不明」の壁
パッチテストでニッケルが陽性だった患者様が、普段使っているピアスを持参したとします。
そのピアスには「K18」や「サージカルステンレス」「ニッケルフリー」と表示されているかもしれません。
しかし、表示や刻印だけで実際の成分を判断することはできません。

たとえば、ピアスのポスト(耳に通す棒の部分)とキャッチはK18でも、耳たぶに直接触れる本体部分には別の金属が使われていることがあります。
ネックレスでも、チェーン本体と留め具の素材が異なるケースは珍しくありません。
時計のベルトや尾錠、メガネのネジ、指輪の内側など、患者様が気づかない部分にアレルゲン候補金属が潜んでいることもあります。
「ニッケルフリー」「サージカルステンレス使用」と謳われている製品も、X線分析をかけると微量のニッケルが検出されるケースがあります。
サージカルステンレスは明確な法的定義が乏しく、製品によって組成にばらつきがあるため、敏感な患者様ではアレルギー反応を引き起こすことがあります。
表示の見た目だけを頼りにした患者指導には、一定のリスクが伴います。
実際に当ラボにも、K18表示のピアスを購入したにもかかわらず耳たぶが真っ赤になるという女性からの分析依頼がありました。
ポストとキャッチにはたしかに「K18」の刻印があり、X線分析でも問題なし。
ところが実体顕微鏡でよく見ると、キャッチの付け根とピアス本体の間につなぎ目があり、本体を別途X線分析したところ、ニッケルを含む金メッキ品であることが判明しました。
肌に触れていたのはその本体部分だったわけです。
K18の部品と金メッキ等の異なる材料が組み合わされた製品が確認されることがあります。
金属アレルギーの原因金属を特定する方法「K18」も「ニッケルフリー」も油断禁物。X線分析で正体を暴く
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「どこを測るか」が診療の精度を左右する
前述したように、アクセサリーや金属製品は複数のパーツが組み合わさっていることがほとんどです。
そのため、金属アレルギー目的の成分確認では「どこを測るか」が非常に重要です。
患者様が症状を訴えている部位に接触しているパーツを優先して測定することで、より実用的なデータが得られます。
アクセサリーや金属製品は、部位ごとに異なる材料が使われていることがあります。そのため、症状が出た箇所に接触する部分だけでなく、必要に応じて各部品を分けて測定します。

例えばピアスの場合は、ポスト、キャッチ、装飾本体、接合部などをそれぞれ確認します。ネックレスの場合は、チェーン本体、引き輪、プレート、接続用の丸環などが主な測定候補になります。
時計の場合は、裏蓋、ベルト、尾錠、ピンやネジなど、メガネの場合は、テンプル、蝶番、ネジ、鼻パッド周辺の金属部分などを確認します。指輪では、皮膚に接触する内側のほか、サイズ直しや修理が行われた接合部分も確認対象になります。
見落としやすいのは、ろう付けや溶接などの接合部、後から交換された留め具、ネジやバネなどの小さな部品、メッキや表面処理が施された部分です。外観が同じ色に見えても、部品ごとに組成が異なる場合があります。
また、X線分析は測定箇所の主に表面付近に含まれる元素を確認する方法です。1箇所だけの測定結果を品物全体に当てはめないことも大切です。
にじや質店X線ラボへ相談する際は、品物全体の写真だけでなく「どの部分が肌に当たっているか」「どこに症状が出たか」「パッチテストで反応した金属は何か」をあわせてお伝えいただくと、測定箇所の検討がしやすくなります。
皮膚科での活用イメージ
パッチテスト前であれば、患者様がよく身に付けるアクセサリーの主成分を先に把握することで、重点的に確認すべき元素を絞り込む判断材料になります。
一般的な金属アレルギーのパッチテストでは17〜22種類の金属元素を対象に検査を行いますが、製品の成分があらかじめ分かっていれば、診療にかかる時間の短縮にもつながります。
パッチテスト後であれば、「生活指導の裏付け」として活用できます。
「このピアスの本体部分からニッケルが検出されています。パッチテストの結果と合わせて、使用を控えましょう」などと数値を示しながら説明できれば、患者様の納得感と行動変容の確度が高まります。
思い出のあるアクセサリーほど「外してください」の一言では済みません。

結婚指輪や親から譲られたネックレスも、数値の根拠があることで患者様が納得し、判断しやすくなります。
小児や若年層の患者様では、保護者への説明材料としても客観データが重要です。
「お子さんが日常的に触れている金属に原因物質が含まれているか」を数値で示せることで、家庭での対策が行いやすくなります。
歯科・口腔内金属の確認にも対応
掌蹠膿疱症や原因不明の全身湿疹で長く悩んでいる患者様の中には、口腔内の金属補綴物が一因となっているケースがあります。
しかし、数十年前の治療でカルテが残っていない場合、どの修復物にアレルゲンが含まれているかを特定するのは容易ではありません。
日本歯科医師会の解説でも、口腔内金属のアレルゲン存在部位を特定する手段がなければ、すべての修復物を除去することになり、患者様・歯科医師双方に大きな負担がかかるとされています。
(参考情報・出典:日本歯科医師会 テーマパーク8020 金属アレルギー)

にじや質店X線ラボでの分析は郵送サービスが主体のため、口腔内に装着されたままの補綴物をその場で調べるものではありません。
対象となるのは、取り外した補綴物、製作済みの技工物、患者様が保管している古い詰め物や被せ物など、品物として送付できるものです。
これらの成分を把握できれば、どの補綴物を優先的に除去するか、次回以降は違う素材で製作するかがより明確になり、患者様にとって金銭的にも労力的にも負担の少ない治療計画が立てやすくなります。
当ラボでは歯科用金パラの成分確認に関する記事も公開しており、歯科医院や歯科技工所からの相談にも対応しています。
歯科用金パラのサイレントチェンジに備える|X線分析による材料確認という選択肢
「発注した金パラと、納品された銀歯の色味が違う気がする」 ある歯科医院の先生から、そんなご相談をいただいたことがあります。 歯科技工所へ金銀パラジウム合金(通称・金パラ)による銀歯の製作を依頼したところ、納品された品物が […]
分析結果の提供形態と診療記録への活用
分析結果は偽造防止専用用紙(ガードペーパー)に印刷された原本でお届けします。
コピーすると「COPY」の隠し文字が浮き出る設計のため、原本とコピーの区別が一目でわかります。
電子カルテへのスキャン保存、患者様への説明補助資料としての配布、院内での検討資料としての共有など、さまざまな場面でご活用いただけます。

なお、本サービスは医師・歯科医師の診断を代行するものではなく、分析結果も診断書ではありません。
X線分析はあくまで「素材不明」という壁を越えるための客観的なデータです。診療方針の検討や患者様への説明を補助するためとしてご活用ください。
ご利用方法
品物は郵送でお送りいただくだけで、全国どこからでもご利用いただけます。検体が到着した翌営業日には分析が完了し、佐川急便にてスピード返送いたします。
分析メニューは「簡易分析(1箇所1,100円・税込)」と「プレミアム分析(鑑定士コメント・スペクトル分析付き)」の他に、分析報告書(16,500円〜)付のものもございます。
診療記録への添付や患者様への説明補助資料として提示を想定される場合は、プレミアム分析がおすすめです。
料金体系、ご利用フロー、対応可能な金属元素の一覧など、詳細は医療機関様向けの専用ページをご覧ください。詳細・お申込みは下記からご確認ください。
金属アレルギー診療を支援|非破壊X線分析で原因金属を可視化|全国対応
このサイトは、東京都青梅市の質屋「にじや質店」が運営しており、「にじや質店X線ラボ」および「ロゴマーク」は、株式会社クリエイテイブフアクトリーの登録商標です。 実店舗での質預り・買取・相談にも対応しています。 ▶ にじや […]
投稿者プロフィール

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現役質屋の鑑定士で、非破壊検査(X線分析・導電率・超音波等)を用いた
貴金属・宝石の真贋鑑定および分析の専門家。
「見た目では分からない本質を、科学の目で見抜く」を信条に、
金インゴット・宝飾品・時計などの鑑定と分析を日々の業務として取り組む。
東京都青梅市在住
株式会社クリエイティブファクトリー 代表取締役
■保有資格
・第1級陸上無線技術士
・電気主任技術者
・電気通信主任技術者
■経歴
1991年 株式会社リクルート入社
1994年 都内特許事務所にて特許出願業務に従事
1998年 創業、真空管輸入販売事業を開始
2000年 法人化
2013年 株式会社クリエイティブファクトリー設立
2014年 総合買取事業開始
2022年 にじや質店 竣工
2025年 にじや質店X線ラボ サービス開始
2026年 にじや相続評価 サービス開始
■専門分野
・金インゴットの真贋判定
・貴金属の非破壊分析
・宝石・時計の評価
・偽物・メッキ判別
・真空管
■運営サイト
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