フリマアプリやネットオークションを通じて、個人でも古銭を購入しやすい時代になりました。
スマートフォンひとつで全国のコレクターや販売者から購入できる便利さの一方で、「届いた品物が本物かどうかわからない」「銀貨のはずなのに重さに違和感がある」「偽造品をつかまされたかもしれない」というトラブルのご相談も、当ラボには多く寄せられています。
本記事では、ネットで古銭を購入される際の偽造品リスクと、X線分析を活用した確認方法について、わかりやすく解説いたします。

古銭の偽造品が増えている背景
古銭の偽造は昔からある問題ですが、近年はいくつかの理由で、偽造品がこれまで以上に市場に出回りやすくなっています。
- 第一に、金や銀の相場の高騰によって古銭の価値が上がり、偽造のうま味が増していることがあります。
- 第二に、製造技術の進歩により、見た目だけでは判別がむずかしい精巧な偽造品も出てきているとされます。
- 第三に、フリマアプリやネットオークションという、出品者と購入者が直接顔を合わせない取引形態が広がったことで、偽造品を販売するリスクが出品者側にとって低くなっていることも影響しています。
日本貨幣商協同組合も公式に、偽造鑑定書が付いた銀貨がオークションで出品されている事例について注意喚起を行っています。
鑑定書そのものが偽造される時代になっているわけで、品物だけでなく付属する書類の信頼性も、もはや無条件には信用できない状況です。
参考:日本貨幣商協同組合 当組合発行鑑定書の個別照会について
古銭の偽造品でよく使われる手口
古銭の偽造品で特によく見られる手口をいくつかお伝えします。

1つ目 「素材のすり替え」
本来は銀で作られているべき古銭に、銅や亜鉛を主体とした安い合金を使い、表面だけ銀メッキをかけるという方法です。
ただし、X線分析は主に表面の元素を測定するため、メッキの厚みや状態によっては、表面だけでは判断がむずかしい場合もあります。
銀の含有率が明らかに低かったり、銅・亜鉛・ニッケルなどが不自然に多く出たりする場合は、素材面の違和感を見つける手がかりになります。
実例 豪華な箱入りの中国製「9999」刻印金貨が、銀地金に金メッキを施した偽物だったケース
先日、豪華な箱に納められた中国製の金貨10枚の成分分析をご依頼いただきました。一枚一枚に「9999」(純度99.99パーセント=純金)の刻印が打たれており、刻印上は完全な純金製です。
ところが現物を拝見すると、表面が無駄なほどピカピカに光っており、本物の純金が放つ落ち着いた山吹色の色味とはまったく異なる、ぎらついた質感でした。
当店でこの違和感を出発点にX線分析を行ったところ、主成分が銀であることが判明し、表層にごく薄く金メッキを施した「銀地金+金メッキ」の偽物金貨であることがはっきりしました。
入手ルートを伺うと、ご依頼者のご両親が30年以上前に中国旅行に出かけられた際、現地の金製品を扱う店舗で本物の純金貨だと信じて10枚をまとめて購入されたとのこと。ご両親は本物だと疑わず、そのまま大切に保管され、亡くなられたあとに遺品としてご依頼者に受け継がれたお品物でした。
30年以上の歳月を経て、当時のご両親が騙されていたという事実を知ったご依頼者は、「両親には最後まで本物だと信じさせてあげたほうがよかったのかもしれません」と無念の言葉を残されて、退店されました。
このケースは、刻印を信じて長年大切にしてこられた品物であっても、X線分析を通すことで真実が明らかになる典型例です。ネット購入であれ海外土産であれ、「刻印イコール真贋」とは限らないことを、私たち自身が改めて痛感した一件でもありました。

2つ目 「改刻(かいこく)」
安い古銭をベースにして、極印や刻印を削ったり追加したりして、より高額な古銭に見せかける手法です。
この場合、素材そのものは本物の古銭の合金と同じですので、X線分析だけでは見破れません。
極印の形状や仕上げの特徴を目視で確認することが必要になります。
3つ目 「精密レプリカ」
本物の古銭を精密にコピーして、まったく新しく作り直したもので、素材として本物と同じ配合の銀合金を使っているケースもあります。
ただし、精密レプリカでも微量元素の組み合わせまで完全に再現することはむずかしく、X線分析で表面の微量元素を確認することが手がかりになる場合があります。
購入後のX線分析の活用法
ネットで古銭を購入される場合、X線分析を活用するおすすめのタイミングがあります。
まず「購入後すぐの確認」です。
届いた品物をそのままにじや質店X線ラボへお送りいただき、成分データを確認します。
たとえば天保一分銀であれば銀98パーセント台が出れば期待どおりですし、銀50パーセント以下といった明らかに異常な数値が出れば、出品者や運営への返品交渉の根拠資料として活用できます。
ただし、成分が資料上の品位に近い場合でも、それだけで真正品と断定できるわけではなく、極印の形状や重量、来歴などとあわせて総合的に見る必要があります。
また、すでにお持ちのコレクションの「健康診断」としてご活用いただくのもおすすめです。
過去にネットで購入された品物や、骨董市で買った品物、さらには上記の中国製金貨のように海外で購入された古い金製品など、「ずっと気になっていたけれど確認する手段がなかった」というお品物をまとめてお送りいただき、一括で成分を確認されるコレクターの方が増えています。
先日も、安政二分金、秋田銀判、天保一分銀など計9点をまとめてお送りいただいたコレクターの方がいらっしゃいました。
全点の成分データを取得されたことで、コレクション全体の信頼性が一段階上がったと喜んでいただけました。

X線分析と公式鑑定の組み合わせ方
X線分析は成分の数値を教えてくれますが、「この古銭は真正品である」という公式の認定を出すものではありません。
公式な認定が必要な場面、たとえば高額な古銭の売買や保険評価のときには、日本貨幣商協同組合の鑑定書が適しています。
X線分析は「まず素材が表示どおりかどうかを手軽に確認する」というスクリーニング(ふるい分け)の役割として、きわめて有効に機能します。
たとえば、ネットオークションで購入した10点の古銭があったとします。
全点にJNDAの鑑定書を取得すると、現在の料金では最低でも110,000円(税込)かかりますが、まずX線分析で成分を確認すれば11,000円(10か所分)で全体の傾向がつかめます。
その結果、明らかに素材がおかしい品物を除外し、成分データが期待どおりの品物だけに公式鑑定書の取得を検討する、という段階的なアプローチが取れるわけです。

古銭コレクションの世界では、「自分の目と知識で判断する力」を磨くことが大切にされています。
X線分析は、その判断力をデータで支える道具として、コレクターの方々のお役に立てるものだと考えております。
ご相談・お申込みについて
にじや質店X線ラボでは、古銭・コインのX線分析を1か所あたり1,100円(税込)で承っております。
ネットで購入された品物の確認や、コレクションの成分データの記録、また今回の中国製金貨のように、長年保管されてきたお手元のお品物の素材確認など、さまざまなご利用方法にお応えしています。
まずはLINEでお気軽にご相談ください。
詳細・お申込みは下記の専用ページからご確認いただけます。
コイン・古銭のX線分析|収集品の素材を数値で可視化|全国対応・翌営業日発送 | 金・銀・プラチナ等の非破壊X線分析|1箇所1,100円(税込)から|全国対応・翌営業日発送
このサイトは、東京都青梅市の質屋「にじや質店」が運営しており、「にじや質店X線ラボ」および「ロゴマーク」は、株式会社クリエイテイブフアクトリーの登録商標です。 実店舗での質預り・買取・相談にも対応しています。 ▶ にじや質店 本体サイトはこちらあなたの「この小判、本当に金?」という疑問にデータで応えます。にじやのX線分析なら、大切なコイン・古銭を傷つけずに素材をチェックできます。明治銀貨・中国銀貨・小判・大判などの元素
投稿者プロフィール

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現役質屋の鑑定士で、非破壊検査(X線分析・導電率・超音波等)を用いた
貴金属・宝石の真贋鑑定および分析の専門家。
「見た目では分からない本質を、科学の目で見抜く」を信条に、
金インゴット・宝飾品・時計などの鑑定と分析を日々の業務として取り組む。
東京都青梅市在住
株式会社クリエイティブファクトリー 代表取締役
■保有資格
・第1級陸上無線技術士
・電気主任技術者
・電気通信主任技術者
■経歴
1991年 株式会社リクルート入社
1994年 都内特許事務所にて特許出願業務に従事
1998年 創業、真空管輸入販売事業を開始
2000年 法人化
2013年 株式会社クリエイティブファクトリー設立
2014年 総合買取事業開始
2022年 にじや質店 竣工
2025年 にじや質店X線ラボ サービス開始
2026年 にじや相続評価 サービス開始
■専門分野
・金インゴットの真贋判定
・貴金属の非破壊分析
・宝石・時計の評価
・偽物・メッキ判別
・真空管
■運営サイト
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