海外旅行のおみやげで買ったジュエリーや、相続で受け継いだ古いアクセサリーの内側に、見慣れない記号や文字が刻まれていたという経験はないでしょうか。

これらの中には「ホールマーク」と呼ばれる、国などの公的な機関が品質を保証する刻印が含まれている可能性があります。

本記事では、ホールマークの読み方と確認方法について、わかりやすく解説いたします。

ホールマークとは何か|造幣局による品質証明の仕組み

ホールマークとは、貴金属製品の純度を、メーカー以外の公的な機関が証明する公式の刻印です。

日本では造幣局がこの検査を行っていて、製品の中に貴金属がどれくらい含まれているかを調べ、合格した製品にだけ証明の記号を打っています。

この仕組みの始まりは14世紀のイギリスにあり、ロンドンの金細工師たちの組合が品質検査を行い、合格した品物に刻印を打ったのがそのスタートと言われています。

https://www.mint.go.jp/no-list/operations_certification-mov.html
参考:独立行政法人造幣局ホールマークについて

日本のホールマーク|3つの記号と読み方

日本のホールマークは、3つの記号で組み立てられています。

まず日本国旗(日の丸)を表すマークがあり、次に純度の区分を示すひし形があり、そしてその中に数字が刻まれています。

たとえば金製品で純金に相当する品位の場合は「999」、純度75パーセントの18金製品では「750」、純度58.5パーセントの14金製品では「585」と表記されます。

プラチナ製品ではPt900やPt950、銀製品では925や900といった品位の数字が用いられます。

ホールマークは任意の仕組み|刻印がない貴金属もある

ここで大事なのは、ホールマークは「希望する人だけが利用できる仕組み」だという点です。

造幣局も「このマークは任意のものとして設けられており、市販されている貴金属製品にはマークのないものもあります」と公表しています。

たとえば喜平チェーンのような地金タイプのアクセサリーには打たれることが多い一方で、結婚指輪やダイヤモンドのペンダントなど、あまり作られない種類のジュエリーには、ホールマークがないのが一般的です。

ホールマークの刻印には別途お金がかかるため、すべての貴金属製品に必ずあるとは限らないのです。

海外のホールマークと確実な確認方法

海外で買った金製品では、国ごとに独自のホールマーク制度を持っていることがあります。

イギリスのホールマークでは、純度、検定所、製造者などを示すマークが組み合わされ、古い品物では製造年を読み取れる日付の文字が含まれることもあります。

フランス、ドイツ、イタリアなどにも、それぞれ独自の仕組みがあります。

海外のアンティーク品では、製造年や作られた地域までわかることがあり、ホールマークから歴史的な価値が読み取れる場合もあります。

なお、造幣局では、金の値段が高くなっていることを受けて、消費者を守るという観点から「金製品を買うときは、ホールマーク(品質証明の記号)を確認してみてください」というお知らせを出しています。

第三者の機関が検査をしているという安心感が、購入時の判断材料として役立つわけです。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000097755.html
参考:独立行政法人造幣局プレスリリース(金価格と注意喚起) 

ただし、ホールマークがあれば100パーセント本物とは限りません。

摩耗や打刻の不鮮明さ、海外製品の独自表記、精巧な偽造刻印の可能性などにより、刻印だけで本物かどうかを完全に判定するのはむずかしいのが現実です。

確実に純度を確認したい場合は、X線分析装置などの科学的な機器を使って、品物を傷つけずに調べる方法が役立ちます。

ホールマークの仕組みを持つ国は世界にたくさんあり、ウィーン条約という国際的なとり決めに加わっている国どうしでは、お互いのホールマークを認め合うルールも整えられています。

日本はこの条約には加盟していませんが、造幣局による品位証明は、国内の公的な第三者証明として広く信頼されています。

実際にホールマークの刻印を頼む流れとしては、メーカーや販売業者が造幣局に検査の品物を送り、品質試験に合格した製品にだけ刻印が打たれるという、きちんとした手順を経ています。

検査では、業者が申し出ている純度を本当に満たしているかどうかを確認し、合格した製品にだけ証明の記号が打たれます。

そのため、刻印をもらうには製品の品質に確かな自信が必要となります。

なお、海外旅行で買った貴金属製品の中には、その国のホールマーク制度のもとで検査済みの品が含まれていることがあります。

スイスやイタリアのジュエリーには、製造者と検査機関を示す独自のマークが刻まれていることが多く、こうしたマークは現地の言葉の知識がないと読み取りにくいので、確認のときには専門家に相談するのも一つの選び方になります。

こうした刻印に関わる問題について、にじや質店の鑑定士・佐々木(鑑定歴27年)が実際に経験した実例をご紹介します。

【鑑定士の実例①】ルーペでは完璧に見えた偽造ホールマーク|タングステン合金K18リング事件

2024年10月のことです。60代の男性がお店に入ってきました。無口な方で、会話を拒絶している雰囲気が最初からありました。

無言のままカウンターに指輪を2個差し出して、評価を求めるような仕草をされました。

手に取った瞬間、ずっしりとした重さがありました。ただ、指輪としては装飾が一切なく、あまりにもシンプルなデザインです。

普通、K18の指輪というのは、何かしら意匠があったり、ウェーブやカットが入ったりするものです。この無地のシンプルさに、最初から少し引っかかるものがありました。

次にルーペで刻印を確認しました。造幣局検定マークとK18の刻印が刻まれています。

K18の刻印そのものは問題なく見えましたが、造幣局検定マークの日の丸の線が、なんとなく太いように見えました。

本物の刻印と比べると微妙に線幅が違うのです。ただ、この時点では確信には至りませんでした。

そこで比重計で比重を測りました。結果はK18相当の数値で、特に問題ありませんでした。

この段階では「やはり本物か」とも思いました。しかし念のため、X線蛍光分析装置にかけてみることにしました。

X線分析の最初の結果では、金の含有量がK20相当と出ました。K18ではなくK20相当というのはおかしな値です。

また、通常は検出されないはずのニッケルが、やや多めに出ていました。これは気になる結果でした。

そこで、リングの縁をヤスリで削ってみました。

するとどうでしょう。飴細工のようにガリッという感触とともに、厚い金メッキの層が崩れ落ち、赤みがかった地金が露出しました。

明らかにおかしい。普通の金製品では、こういう崩れ方はしません。

露出した地金部分を再度X線分析にかけると、タングステンが67.68パーセント、銅が31.93パーセント、ニッケルが0.22パーセントという結果が出ました。

肝心の金はゼロです。タングステン合金に厚い金メッキが施された、精巧な偽造品であることが判明しました。

タングステンは金に近い比重を持つ金属で、このような偽装に悪用されることがあります。

刻印は精巧に偽造され、ルーペで見ても一見本物に見えました。比重測定だけでは見抜けなかったわけです。

最終的に見破る決め手となったのは、X線分析と、ヤスリで削った際の異常な崩れ方の組み合わせでした。

【鑑定士の実例②】謎の刻印から大珍品が判明|清代雲南省の銀錠鑑定

70代の女性からの依頼で、相続品の評価を依頼されたことがありました。

詳細は不明とのことで、持ち込まれたのは大ぶりの銀の塊でした。船底のような槽形(そうがた)をしており、表面には見慣れない漢字の刻印が刻まれています。

刻印を精査すると、「抱香井」と「楊上達」という文字が確認できました。これは清代・雲南省に実在した銀号(銀を扱う商家)の刻印です。

形状は「十両大槽銀錠」と呼ばれるもので、重量は375.9グラムありました。

中国の銀錠は偽物が非常に多く、市場に出回っている品のほとんどは後世の複製や贋作です。慎重に刻印の鮮明さ、形状の整合性、重量、素材感などを総合的に検証しました。

その結果、本品は刻印が非常に鮮明で、形状・重量・素材すべてにおいて本物の清代銀錠の特徴を満たしていると判断しました。

評価額は50万円。

「ただの古い塊」だと思われていた相続品が、実は清代雲南省の由緒ある大珍品だったわけです。

こうしたケースは、ホールマークや刻印の読み方を知らなければ、その価値に気づかないまま見過ごされてしまう可能性があります。

刻印の意味を正確に読み解ける専門家のもとで評価を受けることの大切さを、改めて感じた事例でした。

海外製のジュエリーやアンティーク品で、刻印の意味や本物かどうかで迷われたときは、にじや質店X線ラボのLINEでお気軽にご相談ください。

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投稿者プロフィール

代表鑑定士 佐々木 英明
代表鑑定士 佐々木 英明
現役質屋の鑑定士で、非破壊検査(X線分析・導電率・超音波等)を用いた
貴金属・宝石の真贋鑑定および分析の専門家。

「見た目では分からない本質を、科学の目で見抜く」を信条に、
金インゴット・宝飾品・時計などの鑑定と分析を日々の業務として取り組む。

東京都青梅市在住
株式会社クリエイティブファクトリー 代表取締役

■保有資格
・第1級陸上無線技術士
・電気主任技術者
・電気通信主任技術者

■経歴
1991年 株式会社リクルート入社
1994年 都内特許事務所にて特許出願業務に従事
1998年 創業、真空管輸入販売事業を開始
2000年 法人化
2013年 株式会社クリエイティブファクトリー設立
2014年 総合買取事業開始
2022年 にじや質店 竣工
2025年 にじや質店X線ラボ サービス開始
2026年 にじや相続評価 サービス開始

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