ご自宅や物置きなどで、古い置物や模型、記念品などに「銀製」と刻印されているのを見つけると、「これは高く売れるのではないか」と期待する方は少なくありません。

しかし、銀製品の価値を判断するうえで重要なのは、単に「銀が使われているか」だけではありません。

実際には、どのくらいの割合で銀が含まれているのか、つまり「品位」が大きく関係します。

この記事では、実際の分析事例をもとに、「銀製」という刻印だけでは価値が分からない理由と、X線分析によって確認できることを解説します。

持ち込まれたのは「銀製」と刻印された機関車模型

今回の分析対象は、「銀製」の刻印がある精巧につくられた機関車模型でした。

本体はずっしりとした金属製で、細部まで作り込まれた工芸品のような印象があります。

車体や車輪、煙突、テンダー(炭水車)部分まで細かく再現されており、見た目だけでも一定の価値がありそうな品物です。

また、本体の一部には「銀製」という刻印が確認できました。

ただし、ここで問題になるのが、刻印の内容です。

「銀製」とは書かれているものの、一般的な銀製品でよく見られる「SV925」「SILVER925」「STERLING」といった、銀の品位を示す刻印はありませんでした。

つまり、銀が使われている可能性はあるものの、銀が何%含まれているのかまでは、刻印だけでは分からない状態だったのです。

他店では「品位が分からない」として約1,000円の査定に

お客様は、この機関車模型を複数の買取店へ持ち込まれたそうです。

しかし、いずれの店舗でも問題になったのは、やはり「品位が分からない」という点でした。

銀製品は、銀の含有量によって価値が大きく変わります。

たとえば、銀が90%以上含まれる高品位の銀製品と、銀の含有量が低い合金では、同じ重量でも評価額は大きく異なります。

今回の機関車模型には「銀製」という刻印はありましたが、SV925などの明確な品位刻印がありません。

そのため、他の買取店では

「銀製であることは分かるが、銀の含有量が分からない」

「本当に高品位の銀として評価してよいか判断できない」

「万が一、銀の含有量が低かった場合のリスクがある」

という判断になり、安全側の査定としてスクラップ扱いとなったと考えられます。

その結果、提示された査定額は約1,000円でした。

買取店の査定が間違っていたわけではない

ここで大切なのは、他店の査定が必ずしも間違っていたわけではないという点です。

買取店は、買い取った品物を再販売したり、地金として処理したりする前提で査定を行います。

そのため、素材や品位が不明な品物に対しては、どうしてもリスクを見込んだ査定になります。

特に銀製品の場合、金やプラチナと比べて1gあたりの単価が低いため、分析設備を持たない店舗では、品位不明の大きな置物や模型を高く評価しにくいことがあります。

「銀製」と刻印されていても、銀の含有量が高いのか、銀メッキなのか、銀を含む合金なのか、一部だけ銀なのか。

これらを目視だけで正確に判断することは困難です。

つまり、品位が分からない状態では、買取店が慎重になるのは自然なことです。

問題は、刻印だけでは判断できない品物に対して、どこまで客観的な確認ができるか、という点にあります。

にじや質店X線ラボで行った分析の流れ

お客様は、約1,000円という査定に納得できず、にじや質店X線ラボへ分析をご依頼されました。

当ラボでは、次の流れで確認を行いました。

まず、肉眼とルーペで刻印の位置や状態を確認します。

次に、顕微鏡で「銀製」の刻印部分を拡大し、打刻の状態や周辺の金属表面を観察しました。

そのうえで、当ラボのX線分析装置「SPECTROSCOUT」を用いて、金属表面に含まれる元素を数値で確認しました。

X線分析は、品物を切ったり削ったりせず、非破壊で成分を確認できる分析方法です。

大切な模型や工芸品を傷つけずに、表面にどのような元素がどれくらい含まれているのかを調べることができます。

X線分析の結果、銀91.61%と判明

分析の結果、主な成分は次の通りでした。

  • Ag(銀):91.61%
  • Cu(銅):7.977%
  • Rh(ロジウム):0.3401%
  • その他、微量元素

結果として、この機関車模型は銀を主体とする高品位の銀製品であることが確認できました。

銀91.61%という数値は、一般的なスターリングシルバー(SV925)の基準である92.5%にわずかに届かないものの、極めて近い水準です。

刻印には「SV925」や「STERLING」とは書かれていませんでしたが、X線分析によって、銀を主成分とする品物であることが客観的に分かりました。

91.61%という配合が物語ること

銀91.61%という数値を見て、「スターリングシルバー(92.5%)に少し足りない、中途半端な配合では」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、分析の現場では、この数字をもう少し踏み込んで読み解きます。

まず知っておいていただきたいのが、X線分析には一定の誤差があるという点です。

X線を当てる角度や、測定する面の状態によって、結果には±数パーセントの誤差が普通に生じます。

そのため、数パーセント以内の誤差であれば、現場ではスターリングシルバー(SV925)と判断します。

今回の91.61%も、こうした誤差を踏まえれば、SV925相当の高品位な銀と見て差し支えありません。

なお、分析の精度をさらに上げたい場合は、複数の箇所を測定して平均をとったり、真空状態で測定したりする方法もありますが、通常の査定の現場でそこまで行うことは稀です。

また、銀に銅を加えること自体は、強度を高めたり加工しやすくしたりするために、古くから行われている一般的な手法です。

銀91.61%・銅約8%という組み合わせも、工芸品や模型の素材として、不自然な配合ではありません。

ただし、製造元の設計資料があるわけではないため、「なぜこの配合にしたのか」という作り手の意図までを断定することはできません。

あくまで、銀を主成分とする高品位の銀合金である、という事実を客観的に読み取れる、というのが分析の役割です。

ちなみに、今回の分析では、銀・銅に次いで、ごく微量のロジウム(0.3401%)も検出されています。

ロジウムは高価な貴金属として知られていますが、今回の査定では、ロジウムそのものを価値の評価対象とはしていません。

検出量がごく微量であることに加え、この分析方法では表面付近の元素を捉えているため、ロジウムがどこに由来し、どのような形で存在しているのかまでは断定できないためです。

買取の現場で価値の対象となる貴金属は、主に金・プラチナ・銀・パラジウムの4つです。

今回の事例で大切なのは、珍しい微量元素に飛びつくことではなく、銀の含有率を数値で確認できたという点にあります。

それこそが、約1,000円と約10万円相当という評価の差を分けた、本質的なポイントなのです。

1,000円査定から、約10万円相当の評価へ

今回の事例で特に重要なのは、分析結果によって評価が大きく変わったことです。品位不明の状態では、他店で約1,000円のスクラップ扱いとなっていました。

しかし、X線分析によって銀91.61%と確認されたことで、銀の含有量に基づいた評価が可能になり、約10万円相当の評価につながりました。

もちろん、実際の評価額は重量、相場、状態、デザイン性、再販可能性などによって変動します。

しかし、今回のように重量のある置物や模型、工芸品の場合、品位が分かるかどうかで評価が大きく変わることがあります。

「銀製」と書いてあるから高い、「品位刻印がないから価値がない」は、どちらも早計です。大切なのは、感覚や思い込みではなく、客観的な数値で確認することです。

置物・模型・工芸品は「重量がある」からこそ品位確認が重要

今回の機関車模型のような品物は、指輪やネックレスと比べて重量があります。

重量がある品物では、銀の含有量の違いが評価額に大きく影響します。

同じ1kgの金属でも、銀が90%以上含まれているものと、銀がほとんど含まれていないものでは、価値はまったく違います。

そのため、重量のある銀製品ほど、品位確認の重要性が高くなります。

ご自宅の整理や遺品整理で、次のような品物が出てきた場合は、自己判断で処分する前に一度確認することをおすすめします。

  • 銀製の置物
  • 銀杯
  • 記念品
  • 模型
  • 工芸品
  • トロフィー
  • 古い贈答品
  • 企業の記念品
  • 箱や保証書のない銀製品

特に「銀製」「SILVER」とだけ刻印されている品物は、見た目だけでは判断が難しいことがあります。

まとめ|「銀製」と書いてあるだけで諦めず、品位を確認しましょう

今回の機関車模型は、「銀製」の刻印はあるものの、品位を示す刻印がありませんでした。

そのため、他店では品位不明として約1,000円の査定になりましたが、X線分析によって銀91.61%と判明し、約10万円相当の評価につながりました。

ご自宅に「銀製」「SILVER」と刻印された置物や模型、記念品がある場合、自己判断で処分してしまうのは非常にもったいないことがあります。

「これ、本当に銀なのかな」

「他店で安く言われたけれど、納得できない」

「刻印はあるけれど、品位が分からない」

そのような品物があれば、ぜひにじや質店X線ラボへご相談ください。

見た目や刻印だけでは分からない価値を、X線分析による客観的なデータで確認いたします。

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投稿者プロフィール

代表鑑定士 佐々木 英明
代表鑑定士 佐々木 英明
現役質屋の鑑定士で、非破壊検査(X線分析・導電率・超音波等)を用いた
貴金属・宝石の真贋鑑定および分析の専門家。

「見た目では分からない本質を、科学の目で見抜く」を信条に、
金インゴット・宝飾品・時計などの鑑定と分析を日々の業務として取り組む。

東京都青梅市在住
株式会社クリエイティブファクトリー 代表取締役

■保有資格
・第1級陸上無線技術士
・電気主任技術者
・電気通信主任技術者

■経歴
1991年 株式会社リクルート入社
1994年 都内特許事務所にて特許出願業務に従事
1998年 創業、真空管輸入販売事業を開始
2000年 法人化
2013年 株式会社クリエイティブファクトリー設立
2014年 総合買取事業開始
2022年 にじや質店 竣工
2025年 にじや質店X線ラボ サービス開始
2026年 にじや相続評価 サービス開始

■専門分野
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