金のネックレスやブレスレットをお持ちの方の中には、「比重計で調べれば、本物の金かどうか分かる」と考えている方も多いのではないでしょうか。

たしかに、金は比重が高い金属です。

純金やK18のような貴金属は、一般的な金属よりも重いため、比重測定は本物かどうかを判断する手がかりになります。

しかし、比重計は万能ではありません。

とくに注意が必要なのが、内部が空洞になっている「中空構造」のネックレスやブレスレットです。

見た目にはしっかりとしたK18製品に見えても、中空構造の場合、比重値が本来より低く出てしまうことがあります。

今回は、にじや質店X線ラボで実際に分析した「750刻印入りの中空K18ネックレス」の事例をもとに、比重計の限界と、X線分析を組み合わせる重要性についてご紹介いたします。

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750刻印入りのK18ネックレスを分析

このネックレスは、お客様がお母様の遺品整理の際に出てきたお品物です。

お客様はまず他店に持ち込まれたそうですが、「750の刻印はあるものの、比重計にかけると比重値が低いため、模倣品の可能性がある」と説明され、格安の査定額を提示されたとのことでした。

お客様としては、しっかりと750の刻印が打たれているにもかかわらず、模倣品と判定されたことに納得がいかず、当店にご相談くださいました。

今回分析したのは、「750」の刻印が入った金色のネックレスです。

「750」は、金の含有率が75%であることを示す刻印で、K18と同じ意味を持ちます。つまり、刻印どおりであれば、このネックレスは18金相当の品物ということになります。

しかし、刻印があるからといって、必ずしも素材が表記どおりとは限りません。

近年では、K18や750の刻印がありながら、実際には金メッキだったり、金の含有率が足りなかったりする製品も見られます。

そこで、まずは比重計を使って測定を行いました。

比重計で測ると「Lo」表示に

比重測定では、まず空気中での重さを測ります。

今回のネックレスの空気中重量は、23.869gでした。

次に、水中に沈めた状態で重さを測ります。

水中重量は19.205gでした。

比重計は、空気中での重さと水中での重さの差をもとに、その物体の比重を計算します。

金は比重が高いため、本来K18であれば、一定以上の比重値が出ることが期待されます。

今回の空気中重量と水中重量の差から計算すると、このネックレスの見かけの比重は約5.12でした。

これは、K18本来の比重(およそ15前後)の3分の1ほどで、金メッキの下地に使われる真鍮(約8.4)よりも低い数値です。

そのため、比重計の判定は規定値以下を示す「Lo」となり、金メッキ判定のような結果になりました。

もし比重計の結果だけを見れば、「これはK18ではない」「金メッキではないか」と判断してしまう可能性があります。

しかし、ここで判断を終えてしまうと、誤判定につながるおそれがあります。

X線分析ではK18相当の組成を確認

次に、同じネックレスをX線分析装置で測定しました。

X線分析は、品物の表面にX線を照射し、そこに含まれている元素の種類と割合を数値で確認する分析方法です。

品物を切ったり削ったりせずに、金・銀・銅などの成分を調べることができます。

今回のX線分析結果は、以下のとおりでした。

  • Au(金):75.77%
  • Ag(銀):13.41%
  • Cu(銅):10.78%

K18は、金の含有率が75%の金合金です。

今回の分析結果では、金が75.77%確認できたため、組成としてはK18相当と判断できる結果でした。

つまり、比重計では金メッキのような判定が出たにもかかわらず、X線分析ではK18相当の成分が確認されたのです。

なぜ比重計では低く出たのか

では、なぜK18相当のネックレスにもかかわらず、比重計では低い値が出てしまったのでしょうか。

理由は、このネックレスが「中空構造」だったためです。

中空構造とは、見た目は通常のネックレスと同じように見えても、内部に空洞がある作りのことです。

金の使用量を抑えながら、ボリュームのあるデザインに見せられるため、ネックレスやブレスレットなどで見られることがあります。

比重計は、空気中の重さと水中での重さから体積を推定し、比重を計算します。

しかし、中空ネックレスの場合、内部に空気を含んだ空洞があります。

水中に沈めたとき、この空洞の影響によって、見かけ上の体積が大きくなります。

その結果、実際の金属部分だけで考えた比重よりも、低い比重値が出てしまうのです。

今回のような中空K18ネックレスでは、本来はK18相当の組成であっても、比重計では規定値以下と判定され、金メッキのように見えてしまうことがあります。

断面を確認すると中空構造が分かった

今回の事例では、さらにチェーン端部をニッパーで切断し、顕微鏡で断面を確認しました。

その結果、内部が空洞になっていることが確認できました。

この断面観察によって、比重値が低く出た理由も説明できます。

つまり、比重計が間違っていたというよりも、比重計の測定方法と中空構造の相性が悪かったということです。

今回の依頼者様は理系のご出身ということもあり、X線分析でAu75.77%のK18相当の組成が確認できたこと、そして断面観察で内部が中空構造になっていたため比重値が低く出たという原理についてご説明したところ、非常にご納得されたご様子でした。

他店では模倣品の可能性があると言われ、納得がいかないまま査定額を提示されていたお品物でしたが、原理からご説明することで、安心してお話を進めていただくことができました。

比重計は便利な機器ですが、測定対象の構造によっては、正しい判断が難しくなる場合があります。

比重計が有効なケースと苦手なケース

比重計は、無垢の金製品を確認する場合には有効な手がかりになります。

たとえば、シンプルな金のリングや、内部に空洞のないインゴット、無垢のペンダントトップなどであれば、比重値は素材判断の参考になります。

一方で、次のような品物では注意が必要です。

  • 中空構造のネックレス
  • 中空構造のブレスレット
  • 空洞のあるデザイン品
  • 石付きのジュエリー
  • 複数素材が組み合わされた製品
  • メッキやコーティングが施された製品
  • 内部と表面の素材が異なる可能性がある品物

こうした製品では、比重値だけで本物・偽物を判断するのは危険です。とくに中空製品の場合、今回のように本来K18相当であっても、比重計では低く出ることがあります。

反対に、別素材を組み合わせた品物では、比重値だけでは中身の違いを見抜けない場合もあります。

X線分析で分かること

X線分析では、測定した部分に含まれる金属元素を数値で確認できます。今回のように、金・銀・銅の割合を測定することで、K18相当の組成かどうかを確認できます。

比重測定とは異なり、中空構造による見かけ上の体積の影響を受けにくい点が大きな特徴です。

ただし、X線分析にも限界があります。X線分析で確認できるのは、基本的に測定した表面部分の元素組成です。内部に別素材が入っている品物や、厚いメッキが施されている品物では、X線分析だけですべてを判断できない場合もあります。

そのため、にじや質店X線ラボでは、ひとつの検査だけで判断するのではなく、複数の確認方法を組み合わせて総合的に見ています。

複数の検査を組み合わせることが大切

今回の中空K18ネックレスの事例では、比重計だけを見れば「金メッキではないか」と判断される可能性がありました。しかし、X線分析ではAu75.77%が確認され、K18相当の組成であることが分かりました。

さらに、顕微鏡で断面を確認することで、内部が空洞になっていることも確認できました。このように、ひとつの検査結果だけでは見誤ることがあります。

にじや質店X線ラボでは、品物の状態に応じて、以下のような確認を組み合わせています。

  • 刻印の確認
  • 外観の確認
  • 顕微鏡での観察
  • X線分析
  • 比重測定
  • 必要に応じた断面確認

金製品の判定では、「刻印があるから本物」「比重が低いから偽物」「X線で金が出たから絶対に問題ない」といった単純な判断はできません。

品物の構造、測定箇所、表面状態、刻印、成分、重さなどを総合的に見ることが大切です。

中空K18ネックレスは、比重計だけでは判断できないことがある

今回の事例から分かるように、中空K18ネックレスは、比重計だけでは正しく判断できない場合があります。比重計は有効な分析手法ですが、中空製品や特殊構造品では、内部の空洞によって比重値が低く出ることがあります。

その結果、本来K18相当の品物であっても、金メッキのように誤判定される可能性があります。

一方、X線分析では、金属組成を数値で確認できるため、今回のようにAu75.77%というK18相当の結果を得ることができました。

大切なのは、比重計とX線分析のどちらか一方だけに頼るのではなく、それぞれの特徴と限界を理解したうえで、複数の検査を組み合わせることです。

お手元の金製品について、「刻印はあるけれど本当にK18なのか不安」「比重計で低い数値が出たが納得できない」「中空かどうか分からない」という場合は、にじや質店X線ラボまでお気軽にご相談ください。

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投稿者プロフィール

代表鑑定士 佐々木 英明
代表鑑定士 佐々木 英明
現役質屋の鑑定士で、非破壊検査(X線分析・導電率・超音波等)を用いた
貴金属・宝石の真贋鑑定および分析の専門家。

「見た目では分からない本質を、科学の目で見抜く」を信条に、
金インゴット・宝飾品・時計などの鑑定と分析を日々の業務として取り組む。

東京都青梅市在住
株式会社クリエイティブファクトリー 代表取締役

■保有資格
・第1級陸上無線技術士
・電気主任技術者
・電気通信主任技術者

■経歴
1991年 株式会社リクルート入社
1994年 都内特許事務所にて特許出願業務に従事
1998年 創業、真空管輸入販売事業を開始
2000年 法人化
2013年 株式会社クリエイティブファクトリー設立
2014年 総合買取事業開始
2022年 にじや質店 竣工
2025年 にじや質店X線ラボ サービス開始
2026年 にじや相続評価 サービス開始

■専門分野
・金インゴットの真贋判定
・貴金属の非破壊分析
・宝石・時計の評価
・偽物・メッキ判別
・真空管

■運営サイト
・にじや質店
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