2026年6月、にじや質店X線ラボに島津製作所の蛍光X線分析装置「EDX-7200」が加わりました。従来から稼働しているSPECTRO SCOUTとの2台体制です。
EDX-7200導入完了のお知らせ|分析メニューを順次公開いたします
平素より、にじや質店X線ラボをご利用いただき、誠にありがとうございます。 このたび、島津製作所製 エネルギー分散型蛍光X線分析装置「EDX-7200」の導入・初期設定が完了いたしました。これにより、既存のSPECTRO […]
この記事では「X線分析って何が分かるの?」という基本から、新しい装置によって実際に変わったこと、そして変わらないことを、分析の現場からお伝えします。
蛍光X線分析で何が分かるのか
蛍光X線分析は、品物にX線を当て、そこから返ってくる元素ごとの反応を読み取ることで、金属成分を数値で確認する方法です。
品物を削ったり溶かしたりする必要がなく、非破壊のまま、数十秒で結果が出ます。
たとえば、K18と刻印された指輪を測定した場合、金が75%前後含まれているかどうかを確認できます。
シルバー925と表示されたアクセサリーであれば、銀が92.5%前後かどうか。
「ニッケルフリー」と書かれた製品に、本当にニッケルが入っていないかどうか。
こうした情報が、元素ごとのパーセンテージとして数値で出ます。

ただし、X線分析で分かるのはあくまで「測定した箇所の表層成分」です。
指輪の内側を測れば内側の表層、ネックレスの留め具を測れば留め具の表層が分かります。
品物全体が一度で丸ごと分かるわけではありません。だからこそ、「どこを測るか」が非常に重要になります。
従来の分析で「あと一歩」と感じていた場面
当ラボではこれまで、SPECTRO SCOUTを主力機として、金・銀・プラチナ・パラジウムなどの貴金属分析を中心に数多くの分析を行ってきました。一般のお客様からの素材確認や買取前の確認では、現在も十分な性能を発揮している装置です。
一方で、一般材料分析やRoHS分析、異物分析など、企業からのご相談では、より幅広い材料への対応や詳細分析が求められる場面がありました。
短時間で主要元素を確認でき、金・銀・プラチナ・パラジウムの判定において十分な実績がある装置です。
ただ、分析を重ねる中で「あと一歩」と感じる場面もありました。
たとえば、ピアスのポストだけ、ネックレスの留め具だけを測りたい場面。照射範囲に対して品物のパーツが小さいと、隣接する部分の成分まで拾ってしまい、見たい箇所のデータがぼやけることがあります。
「ニッケルフリー」表示の製品に微量のニッケルが含まれているかどうか。ごく微量の元素になると、検出の限界に差し掛かる場面もありました。
メッキか無垢かの判断はできても、「メッキの厚さが何ミクロンか」までは出せない。分厚い金メッキが施された品物だと、表面だけ見れば本物の金に見えてしまうこともあり、もう一段踏み込んだデータが欲しいと感じていました。
EDX-7200が加わって変わったこと
EDX-7200を導入して最も大きく変わったのは、分析できる材料の範囲が広がったことです。

従来は貴金属分析が中心でしたが、EDX-7200の導入により、アルミニウム、セラミックス、ステンレスなどの一般材料にも対応し、一般材料分析・RoHS分析・異物分析など、企業向け分析サービスへ事業領域を広げることができました。
この背景には、EDX-7200がナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、リン(P)といった軽い元素まで読み取れることがあります。
従来のSPECTRO SCOUTでは捉えにくかったこれらの元素まで検出できるようになったことで、貴金属以外の材料も数値で確認できるようになりました。
分析できる元素の範囲は、下の図のとおりです。ナトリウム(Na)からウラン(U)まで幅広くカバーしており、こうした検出範囲の広がりが、アルミニウムやステンレス、セラミックスといった一般材料の分析につながっています。

アルミニウムやステンレス、セラミックスといった一般材料の分析が可能になったのは、この検出範囲の広がりによるものです。
EDX-7200は、Φ1mm・Φ3mm・Φ5mm・Φ10mmの4種類のコリメータを備えており、試料の大きさや測定目的に応じて最適な照射径を選択できます。

そのため、微小部位だけでなく、大きな試料まで用途に応じた分析が可能になりました。微量元素の検出感度も上がりました。
「ニッケルフリー」表示の製品に本当に微量のニッケルが入っていないかを、従来より高い精度で確認できます。
金属アレルギーの原因候補金属(ニッケル・コバルト・クロム等)の微量検出に強みが出ます。
さらに、膜厚分析(メッキの厚さ測定)にも対応しています。
従来は「メッキか無垢か」の二択でしたが、「メッキが何ミクロンの厚さで存在しているか」というデータが取れる方向に動き出しました。
厚い金メッキが施された品物に対して、従来より踏み込んだ判断材料を提供できるようになります。
さらに、分析結果をライブラリと照合することで、SUS304、SUS316、SUS316Lなどの金属規格との一致度を確認できるようになりました。
材質確認や品質管理だけでなく、受入検査や製造現場での材料確認にも活用できる機能です。

2台あることの意味
新しい装置を導入したからといって、SPECTRO SCOUTの役割がなくなるわけではありません。
2台はそれぞれ得意分野が異なります。
SPECTRO SCOUTは、金・銀・プラチナ・パラジウムなどの貴金属分析を中心とした一般ユーザー向け分析に強みがあります。
EDX-7200は、一般材料分析、RoHS分析、異物分析、金属規格照合、膜厚分析など、企業向けの詳細分析に強みがあります。
目的に応じて最適な装置を使い分けることで、分析の幅と精度の両方を高めています。

X線分析装置は非常に高額な設備です。
一般的な買取店では導入が難しく、ルーペ・比重計・磁石での確認が中心になるのが実情です。
現実問題として、設備や測定体制の違いが、素材確認の精度に影響することは否定できません。
目視・比重計・磁石だけでは判断しにくい品物もあるため、ご自身の大切なお品物の成分を事前に数値で把握しておくことは、売却や整理の判断材料として大きな意味があります。

変わらないこと
装置が新しくなっても、当ラボの姿勢として変わらないことがあります。
X線分析で「分かること」と「分からないこと」の境界は、正直にお伝えするということです。
X線分析は表層成分を測る方法です。
厚みのある金インゴットの内部に別の金属が仕込まれているかどうかは、X線だけでは確認しきれません。
内部構造の確認には、超音波検査や導電率分析など、別の機材を組み合わせる必要があります。
また、分析結果はあくまで素材データです。ブランド品の真贋を証明する鑑定書ではありません。
「この部分にはこの金属がこれだけ含まれている」という客観的な事実を、数値で確認するためのものです。
最後に、どれだけ装置が優秀でも、測定結果を読み解く人間の判断が精度を左右します。
どの部分を測るか。結果に違和感があるか。別の箇所も測るべきか。X線以外の検査を組み合わせるべきか。
こうした判断を積み重ねることが、分析の品質を決めるという点は、装置が何台になっても変わりません。
なお、当ラボでは、現在のEDX-7200による無機材料分析に加え、2027年にはFTIR(フーリエ変換赤外分光分析装置)の導入を予定しています。
FTIRが加わることで、樹脂、ゴム、プラスチック、接着剤、塗料などの有機物分析にも対応できる体制を目指しています。
将来的には、EDXによる元素分析とFTIRによる有機物分析を組み合わせ、無機物・有機物を総合的に評価できる分析体制を構築し、「にじや分析ラボ」として企業・研究機関・一般のお客様まで幅広いニーズにお応えできる分析サービスを目指してまいります。
ご利用方法
にじや質店X線ラボでは、SPECTRO SCOUTとEDX-7200を活用し、品物の状態や目的に応じた金属成分確認を行っています。
全国対応・郵送完結。簡易分析1箇所1,100円(税込)〜です。
鑑定士コメントやスペクトル分析を含む報告書付きプレミアム分析もご用意しています。
- 買取に出す前に素材を確認しておきたい。
- 他店で「価値が低い」と言われたが、疑問が残る。
- フリマやオークションで購入した品物の成分を確認したい。
- 遺品整理で出てきた貴金属が本物かどうか分からない。
このような場合は、まずLINEから品物の写真、刻印の有無、気になっている点をお送りください。
測定に適した品物か、どの部分を確認すべきかを含めてご案内いたします。詳細・お申込みは下記からご確認ください。
本物か判定|個人向けX線分析サービス|全国対応
このサイトは、東京都青梅市の質屋「にじや質店」が運営しており、「にじや質店X線ラボ」および「ロゴマーク」は、株式会社クリエイテイブフアクトリーの登録商標です。 実店舗での質預り・買取・相談にも対応しています。 ▶ にじや […]
投稿者プロフィール

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現役質屋の鑑定士で、非破壊検査(X線分析・導電率・超音波等)を用いた
貴金属・宝石の真贋鑑定および分析の専門家。
「見た目では分からない本質を、科学の目で見抜く」を信条に、
金インゴット・宝飾品・時計などの鑑定と分析を日々の業務として取り組む。
東京都青梅市在住
株式会社クリエイティブファクトリー 代表取締役
■保有資格
・第1級陸上無線技術士
・電気主任技術者
・電気通信主任技術者
■経歴
1991年 株式会社リクルート入社
1994年 都内特許事務所にて特許出願業務に従事
1998年 創業、真空管輸入販売事業を開始
2000年 法人化
2013年 株式会社クリエイティブファクトリー設立
2014年 総合買取事業開始
2022年 にじや質店 竣工
2025年 にじや質店X線ラボ サービス開始
2026年 にじや相続評価 サービス開始
■専門分野
・金インゴットの真贋判定
・貴金属の非破壊分析
・宝石・時計の評価
・偽物・メッキ判別
・真空管
■運営サイト
・にじや質店
https://nijiya-7ten.jp
・にじや質店X線ラボ
https://nijiya-xray.jp
・にじや相続評価
https://nijiya-souzoku.jp
・ヴィンテージサウンド
https://vintagesound.jp
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