ネックレスの留め具を裏返すと、「K18」の刻印がはっきりと打たれている。色味も重さも、手に持った感触も「本物らしい」。

ところがチェーン本体を測定してみると、金はほとんど含まれていなかった…。

にわかには信じがたいかもしれませんが、留め具やプレートなど「刻印が入りやすいパーツだけ」に本物の金を使い、チェーン本体は別の金属で作られた品物が、実際に分析の現場に持ち込まれています。

この記事では、こうした「ハイブリッド偽造」と呼ばれる手口の仕組みと、見抜くために何が必要かを解説します。

「ハイブリッド偽造」とは何か

ハイブリッド偽造とは、ネックレス全体を模倣品にするのではなく、一部のパーツだけに本物の金を使い、別の部分を安価な金属やメッキで作る手口です。

ネックレスであれば留め具や引き輪、プレートなど、刻印が打たれやすいパーツだけに本物のK18を使います。

一方で、チェーン本体には刻印が入っていないことが多く、見た目だけでは素材を判断しにくい部分です。

このチェーン部分を安価な金属に金メッキしたものへ差し替えると、留め具だけを確認する人には見抜きにくい構造になります。

つまり、K18刻印は「その刻印が打たれているパーツの手がかり」にはなりますが、ネックレス全体の素材を保証するものではありません。

この手口は金製品だけに限りません。

プラチナのネックレスでも、留め具にはPt850の刻印がありながらチェーン部分がシルバー系素材というパターンが確認されることがあります。

一方で、銀そのものがこの手口の対象になることはほとんどありません。銀はもともと安価な素材のため、一部だけ本物を使ってコストを抑える意味がないからです。

刻印のあるパーツだけで判断しないことが大切です。

なぜこの手口は見抜きにくいのか

ハイブリッド偽造が厄介なのは、一般的な確認方法をすり抜けやすい点にあります。

まず、ルーペで見ているのは主に刻印部分です。留め具の「K18」が深くはっきり打たれていれば、それだけで安心してしまう人は少なくありません。

しかしルーペでチェーン本体を見ても、金が何パーセント含まれているかまでは分かりません。

磁石テストにも限界があります。本物の金は磁石に反応しにくい金属ですが、模倣品側に銀や真鍮など磁石に反応しにくい素材が使われていれば、簡易チェックでは違和感が出ません。

留め具だけが本物であれば、なおさら判断は難しくなります。

比重計による確認も、ネックレスでは誤差が出やすい方法です。細かいパーツが連なっており、中空構造や複数素材の組み合わせもあります。

全体の重さだけを見ても、どのパーツにどの素材が使われているかは切り分けられません。

結局、留め具だけ、刻印だけ、重さだけを見るのではなく、パーツごとに素材を確認する視点が必要です。

どんな場面で起きやすいか

ハイブリッド偽造が特に問題になるのは、フリマアプリやネットオークションでの購入です。

出品画像では留め具の刻印部分だけが拡大されて撮影されていることが多く、チェーン本体の素材まで画像からは判断できません。

また、遺品整理で出てきたネックレスにも注意が必要です。

長年使用されるうちに留め具が壊れ、修理の際に別の金属で交換されているケースがあります。

元の品物がK18だったとしても、修理後にパーツの素材が変わっている可能性は否定できません。

フリマ・オークションで買ったK18ネックレス、本物?偽物?X線分析でチェックできます。

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鑑定士Q&A 現場で見えてくること

Q. 留め具だけ本物でチェーンが模倣品というハイブリッド型は、どのくらいの頻度で持ち込まれますか。金以外でも同じ手口はありますか。

A. 年間で5〜6本ほど持ち込まれます。ただし、必ずしも最初から偽装を目的として作られたものとは限りません。長年使ううちに留め具が壊れ、修理や交換によって一部のパーツだけ材質が変わっているという場合もあります。

金以外では、プラチナでも同じような事例があります。一方で、銀は素材そのものが安価なため、一部だけ本物を使ってコストを抑える意味がなく、この手口の対象になることはほとんどありません。

Q. X線分析で確認する場合、チェーンのどこを測定しますか。1箇所だけの測定では足りないケースはありますか。

A. ネックレスの場合は、チェーン本体、引き輪、プレートなどを、それぞれ別の箇所として測定します。刻印のあるプレートや引き輪だけを測っても、チェーン本体が同じ材質かどうかまでは分かりません。

そのため、品物全体の材質を確認したい場合は、少なくともチェーン本体、引き輪、プレートの3箇所を測定することをおすすめしています。

チェーン本体については、色や構造が全体で均一であれば、測定箇所はどこでも構いません。ただし、途中で色調や構造が変わっている、修理跡がある、複数の部材が組み合わされているといった場合には、複数箇所を測定します。

まとめ K18の刻印を見て安心する前に

留め具に刻印があるからといって、品物全体が同じ素材とは限りません。

特にフリマアプリで購入した品物や、入手経路の分からない遺品は、パーツごとに素材が異なる可能性を考慮する必要があります。

X線分析であれば、留め具とチェーン本体を別々に測定し、それぞれの金属組成を数値で確認できます。

先ほどの鑑定士Q&Aにもあったように、チェーン本体、引き輪、プレートといった複数の箇所を測定することで、「1箇所の刻印」ではなく「複数箇所の数値データ」で素材を把握できます。

これが、後悔しない判断につながります。

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投稿者プロフィール

代表鑑定士 佐々木 英明
代表鑑定士 佐々木 英明
現役質屋の鑑定士で、非破壊検査(X線分析・導電率・超音波等)を用いた
貴金属・宝石の真贋鑑定および分析の専門家。

「見た目では分からない本質を、科学の目で見抜く」を信条に、
金インゴット・宝飾品・時計などの鑑定と分析を日々の業務として取り組む。

東京都青梅市在住
株式会社クリエイティブファクトリー 代表取締役

■保有資格
・第1級陸上無線技術士
・電気主任技術者
・電気通信主任技術者

■経歴
1991年 株式会社リクルート入社
1994年 都内特許事務所にて特許出願業務に従事
1998年 創業、真空管輸入販売事業を開始
2000年 法人化
2013年 株式会社クリエイティブファクトリー設立
2014年 総合買取事業開始
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2026年 にじや相続評価 サービス開始

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